シンプル・簡単な絵の描き方、短時間で描くイラストのコツ
メモや手紙にかわいくて簡単な絵を手早く描くことができたり、タイムリーな話題に沿ったイラストをサッと描いてSNSにアップできると、コミュニケーションツールとしてのイラストの役割が大きく広がります。
今回は、シンプルで印象的なイラストの描きかたや、時間をかけずに魅力的なイラストを描く方法を動物と人物を例に解説します。また、シンプルであってもたくさんの作品を描くことは、絵の上達にもつながります。簡単な絵を描くことを楽しみながら、コツをつかみましょう。
シンプルで簡単な動物イラストの描き方
動物(ハリネズミ)をテーマにしたシンプルで簡単なイラストの描き方を紹介します。要素の絞り込みやラフを描くことなどがポイントです。
主題を明確にし、絵の要素を絞り込む
シンプルな絵の描きかたのコツは、第一に主題を明確にすることです。絵を構成する要素を絞り込んで簡単にすることで、その絵で伝えたいことが明確になり、印象的なイラストに仕上げることができます。まずは、簡単な絵での造形に適した動物をテーマに選んでみましょう。
円・楕円をベースにラフを描く
動物は、基本の形状を円や楕円で考えましょう。
できるだけ少ない数の円や楕円を組み合わせた簡単な絵をラフとして描きます。図のようなハリネズミであれば、楕円を1つ描き、鼻先や手足、ハリの部分を付け足すように描きます。
絵がシンプルであればあるほど、目や口、手足といった、限られた要素の位置はより重要になります。
特に目の位置や大きさは、生き物の表情や性格を決定的にするポイントです。簡単な絵で構いませんので、ラフの段階で納得がいくまで何度でも描き直してみましょう。
ペン入れをする
ラフが決まればペン入れをします。
今回は、シンプルな造形を際立たせるため、サインペンのような太めで強弱の差があまりないブラシを選びました。
ほんの少し線の弱などのタッチがあることで、フリーハンドのやわらかさも残っています。イラストの用途や仕上げたい印象、自分が描きやすい絵の描きかたに合わせてツールを選びましょう。
色数を抑えて着彩する
シンプルな線に合わせて、着彩も色数を抑えて、均一な塗りで仕上げます。口や手足、尻尾など、実際の生き物の色に合わせるだけでなく、強調したい部分に色を置くとメリハリがつきます。
今回は、イラストのやわらかい雰囲気に合わせて、実際の生き物に近い落ち着いた色で着彩しています。イラストとしてより目立たせたい場合は、背景色に明るい色を置いたり、写真にはめ込んだりするなど、さまざまな工夫ができます。
デフォルメされた簡単な絵柄だからこそ、実物の生き物とはまったくちがう色で着彩し、より自分なりの絵の個性を強調してもよいでしょう。
造形とともにペンタッチや色をシンプルにまとめたイラストは、Tシャツなどのグッズにしたり、SNSのアイコンやスタンプにしたりと、使い勝手のよさも魅力です。
すばやく短時間で、魅力的な人物イラストを描くコツ
SNSやイラスト投稿サイトなどでは、時々の話題に合わせた即時性のあるイラストなどが人気です。
短時間で手早く魅力的なイラストを描くにはどうすればよいのでしょうか。いくつかの描きかたのコツを紹介しましょう。
絵に描く要素を絞り込む
前述のように、絵に描く要素を絞り込むことは人物イラストでも有効です。たとえば、単純に人数を1人にする、装飾の少ない衣にする、バストアップやウエストショットなど描く部分を限定的にするといった方法が考えられます。
こだわりポイントを設定する
しかし、ただ要素を減らし、証明写真のような素っ気ない簡単な絵になってしまうと、見る人にアピールできるポイントが減り、イラストとしての魅力がなくなってしまいます。
要素は減らしても、こだわりポイントを残すことが何よりも大切です。「可愛い仕草をさせる」「目をひく表情にする」「躍動感のあるポーズにする」「印象的なアングルにする」など、自分なりの絵を描く上でのこだわりポイントを設定しましょう。
ラフを描く
こだわりポイントを決めたら、ラフを描きます。
簡単な絵で構いませんが、作画時間を短縮する場合でも、ラフの工程にはきちんと時間をかけましょう。ラフを描くことで、先に設定した自分のこだわりが反映できているかを確認できますし、さらによいアイデアが浮かぶ場合もあります。
今回は「躍動感」をこだわりポイントとして設定し、それに合わせて髪の動きが出るポーズを考えました。
構図や背景の工夫で、シンプルでもキャッチーに仕上げる
今回のイラストは「躍動感」をポイントとしているため、人物の角度を直立ではなく、斜めにして勢いを感じさせる構図に工夫しました。
さらに枠線を描き足し、揺れる髪の一部を枠線からはみ出させることで、より躍動感を伝わりやすいように演出を加えています。背景は景色ではなく、グラフィックとして描きました。
シチュエーションの設定や、ディテールの作り込みに時間をかけられない、時間をかけずにさっと描き上げたいときでも、こうしたひと工夫をすることで、シンプルでも魅力的なイラストにしあげることができるのです。
線や塗りの取捨選択や時間制限をしよう
シンプルに仕上げ、書き込みすぎずに仕上げるのは、線や塗りの取捨選択が必要です。慣れない間はつい細かくなってしまったり、逆にフラットになりすぎることもあるでしょう。
そうした時は、30分で描く、1時間で描くといった制限を設けて描いてみるといい訓練になるでしょう。そうした経験を積むことで、短い時間でも魅力的に仕上げるための方法が、少しずつ身についていきます。
イラストの具体的な制作手順
このイラストの具体的な制作手順を見てみましょう。
まず、ラフでイラストの全体の構成を確認したら、次にペン入れをし、いわゆる線画を作成します。
先のシンプルな動物のイラストとはちがい、今回は強弱のついたペンタッチを選びます。人物の場合、注目集めたい顔の部分はやや太い強い線で描き、髪の流れや服のシワなどは細く薄い線で描くとメリハリがつきます。顔の中でも特に印象を左右する目の周辺は、線画の段階で強調しておくとよいでしょう。
着彩は目を引く色であるピンク系統でまとめました。色の種類を増やすと、配色バランスなどを考える時間が必要となるため、同系色でまとめることも時間短縮の方法です。
今回は目元に少しだけブルーを入れてアクセントにしています。フラットな塗りで仕上げるのも、シンプルなイラストではよく行われます。さまざまな塗りの技法に慣れるまでは、フラットな塗りを完成状態にしても構いません。
仕上げの髪のグラデーションと光を表すホワイトは、立体感を加える役割をしています。
最後に背景を加えて完成です。
(作画・取材協力:フカキ ショウコ)