絵本イラストの作家になるには
作品を紹介して、人脈を作り、競争の激しい絵本業界に飛び込む方法のヒントを紹介します。
絵本制作のアートとビジネス
子供向けの絵本のページ数が少ないからといって、この分野で成功するのはかんたんというわけではありません。よい絵本は、子供と大人の両方に訴えかけ、何度読んでもおもしろいものです。絵本作家になることはかんたんではありませんが、不可能ではありません。しかしこの業界でキャリアを追求したい場合、知っておくべきことがいくつかあります。
絵本を理解し、目標を決める
絵本挿絵のスタイルは、アメリカの作家のDr. Seussの漫画的な線画から、 イギリスの作家のBeatrix Potterの描くファンタジーリアリズムまでさまざまです。ストーリーも同様に多様性があります。幅広い可能性があるため、最初のステップでは、何をやりたいのかを明確にする必要があります。 アーティストのLucas Elliottさんは次のように問いかけます。「多くの人は、ストーリーのアイデアしか考えていません。読者は誰でしょう? どんなイラストにしましょう? 何ページになるでしょうか? 文字数はどうしたいですか? 500語? それとも5000語でしょうか? こうした要素によって、どの教育レベルを対象に売り込むかが決まります」
自分のストーリーやイラストは、文字がない乳幼児向けの絵本に合うでしょうか?それともヤングアダルト小説向きでしょうか?本の中身のストーリーよりも、ブックカバーアートを手がけたいのでしょうか?答えが見つからないときは、ほかのアーティストの作品を調べてみましょう。Behanceの絵本イラスト作品を見たり、出版されている本から学びましょう。そして、子供や大人と話してみて、どの本が心に響いたか聞いてみましょう。このような経験を重ねることによって、子供のような容赦ない読者を対象にしたときに、どのような作品が受けるのかを理解していくことができます。
「作者のなかには、『読者が私の言わんとしていることを理解しないから、私の本とはかみ合わないのだ』と考えている人もいます。でもおそらく読者は、あなたが何が言いたいのかを理解していても、ただそこにワクワクするようなものを感じていないだけでしょう」(Elliottさん)
子供の読者を惹きつける
売れ行きのよい絵本のイラストは、さまざまなスタイルが採用されていますが、登場人物に共感することができ、視覚的にストーリーを追いやすいと、読者を惹きつけることができるでしょう。子供を含めて、どんな読者でも個性のない主人公に共感することは困難なのです。
アーティストまた作家であるScoot McMahonさんはこう言います。「子供たちが夢中になるように本を作りましょう。子供はページをめくると繰り返される要素を見て、興奮するものです」
猫がいたずらするだけなら普通ですが、長靴をはいた猫がいたずらをするなら印象に残るかもしれません。さらに言葉で登場人物を具体的に説明しないことで、読者は風変わりな見た目の登場人物に、より惹きつけられることでしょう。
「登場人物には、何かしら特別な特徴を加えたいもの。あざやかな色の髪の毛であったり、真っ赤な頬といった、登場人物を目立たせるのに必要な特徴を付け足しましょう」(絵本イラストレーター/Alyssa Newmanさん)
イラストがストーリーにどう作用するかを考えると、どこに力を注ぐべきかがわかります。子供が共感できる方法で感情を表す主人公は、きっちり誠実に描かれた美しい背景よりも読者に訴えかけます。既存の絵本を参考にするだけでなく、子供の頃読んだ本の中で、特に印象に残っている絵本について考えてみてください。イラストの芸術性がどうこうよりも、主人公が仲間と楽しそうに踊っている、おどけた顔のほうをよく覚えているのではないでしょうか。絵本イラストレーターが、どのようなプロセスを踏んで仕事を進めていくのかを見てみましょう。
イラストレーターのShauna Lynn Panczyszynさんが、J. K. Rowlingの世界に命を吹き込み、仕事の進めかたについてアドバイスします。
絵本業界での人脈を築く
絵本のような競争の激しい業界では、人脈の構築が非常に重要です。絵本の協会や作家協会、そしてオンラインコミュニティから始めましょう。人脈の構築に役立ち、一緒に働くクリエーター仲間を見つけ、業界の最新情報を把握することができるからです。仕事をアピールするポートフォリオを持つことは採用の必須条件ですが、作家と仕事をする際にも役立ちます。「新しいクライアントや作家と仕事をするときは、自分のサイトを見て好きな作品を選んでもらいます。そうすると求められている方向性をよりよく理解できるからです」(Newmanさん)
共同制作者との関係を構築するには、コミュニケーションが重要です。率直な話し合いをすることで、両者が制作過程に対して前向きになることができ、同じ目標に向かって取り組むことができます。 また、営業担当者や出版社と連絡を取る必要もあります。日本では東京などの大都市圏に拠点を置く出版社が多いため、対面で人脈を作るには訪問が必要になる場合もあります。絵本や漫画のイベントは、キャリアを深めるための人脈を作るよい機会になるでしょう。McMahonさんは次のようにすすめています。「ポートフォリオを持ち込み、営業担当者や出版社に声をかけ、積極的に営業します。そして作品に対する感想を教えてもらいましょう。どんな意見でも役立つものです。それがたとえ否定的なものであってもです」
訪問する余裕がない場合は、オンラインでつながるか、ほかの方法で連絡を取る必要があります。出版したい本のジャンルを扱っている出版社を調べ、連絡を取りましょう。最初は何十回試しても反応がないかもしれません。しかし、いいタイミングで送信したメールに記載されているポートフォリオへのリンクから、この先のキャリアにつながる大事な関係が始まるかもしれません。連絡する方々に敬意を払いつつも、印象に残るようにしましょう。
「営業担当者は、イラストレーターから送られてくるポストカードを楽しみにしているものです。あなたの作品を実際に見ることができるのですから。その結果、『初めまして。 ぜひお話しさせてください』という郵便が届くと、本当にうれしいものです」(Elliottさん)
出版契約には、完成しているプロジェクトを持ち込む場合もありますが、覚えておきたいのは、営業担当者と出版社によっては、プロジェクトに合わせてイラストレーターと作家を組み合わせてクリエイティブチームを作る方法を好む場合がある、ということです。連絡を取る前に、出版社ごとのアプローチ方法を調べておきましょう。 時間をかけて努力を続け、適切な人脈を作ったあとでも、うまくいくかどうかはタイミングがすべてです。イラストレーターにイラストを発注したい出版社が、いつ自分のスタイルに目を留めるかはまったくわかりません。タイミングが合うまで、媒体と市場の調査を続け、人脈を作り、芸術的なスキルを磨きましょう。出版までの道のりは、短距離走というよりもマラソンで、粘り強さが何よりも大切なのです。
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