ミニマルロゴデザインのすすめ
無駄を削ぎ落したシンプルなデザインのロゴが、いかに効果的であるのか。また、ミニマルデザインのロゴを制作する際のヒントをエキスパートが解説します。
デザイン:ジョージ・ボクア
シンプルだからこそ伝わる
すっきりとした線や幾何学な模様、意外なほどシンプルなデザイン、これらがミニマルデザインの特徴です。ミニマルデザインのロゴは、余分な飾りや色を一切取り除き、複雑なデザインと同等、またはそれ以上のインパクトを見る人に与えます。
ミニマルデザインとは、単純なデザインのことではありません。簡潔なデザインで多くを語るロゴデザインを求めているのであれば、ミニマルデザインが最適です。または、現代的なすっきりとしたロゴでブランドのイメージを刷新したいのであれば、ミニマルデザインがインスピレーションを与えてくれることでしょう。
ミニマルロゴデザインのメリット
ミニマルデザインのロゴは、複雑な飾りや細かなデザインに頼ることなく高い効果を発揮します。その効果を生みだす原動力は、デザインの持つ力です。
ミニマルデザインのロゴは、大抵の場合、シンプルな形とモノクロ系の色を使い、どのような媒体やサイズにも適応できるようになっています。名刺であっても、屋外の看板であっても、ブランドや企業のロゴは明瞭かつ効果的なものでなければなりません。デザインが簡潔であればあるほど、見る人はすばやくロゴを認識できます。
このような理由から、ミニマルデザインのロゴを採用しない場合でも、ミニマリズムという考え方はデザインする際の適切なスタート地点となります。インパクトの強いロゴには、ミニマリズムの基本概念が含まれるべきです。それにより、最終的にどのようなデザインであったとしても、その核心に確固たるデザインの土台を築くことができます。
デザイン:ジョージ・ボクア
デザイン前に、ブランドのアイデンティティをビジュアル化
リサーチする
企業のロゴは単なるマークではありません。自社のアイデンティティを視覚化したものがロゴです。視覚的なアイデンティティには、コーポレートカラーからWebサイトのデザイン、パッケージ、フォント、ロゴに至るまで、あらゆる要素が含まれます。スケッチを始める前に、クライアントとその業界に関して、詳細に調査する必要があります。クライアントの目標や価値観、特徴、対象となる顧客、競合他社などについて確認します。これらの背景となる情報の全てがデザインの要素となります。
インスピレーションを得る段階は、クライアントとデザイナーの双方にとって重要です。
「私の場合、クライアントを想起させる視覚的なものを集めます。多くの場合、クライアントは何を求めているのかを理解していながらも、それを伝えるための方法を知りません」(セーラ・ジフロー)
このような場合にムードボードが役に立ちます。
「ロゴの制作中、ムードボードはクライアントと私の考えを共有するのに役立ちます」(セーラ・ジフロー)
ロゴや画像、色、視覚的にヒントとなる物、印刷物などを集約してクライアントに提示します。視覚的なガイドのようなものを用意できれば、それはクライアントとデザイナーの両方が共感できる方向へと進むための指針となります。
アイデアを視覚化する
ここまで、ミニマルロゴデザインについて理解し、インスピレーションを得てきました。それでは、実際にスケッチを始めましょう。すばやく何度もスケッチして、できるだけ多くのアイデアを視覚化してみます。浮かんだアイデアを思いつくままに描きます。修正や調整は後から行います。
「クライアントに出来上がったスケッチを見せてはいけません。スケッチから、クライアントが最終的なロゴを想像するのは難しいことです。私はスケッチを見せたことがありますが、いつも後悔していました。優れたアイデアが選ばれずに、発展の見込まれないアイデアが選ばれたことがあるからです」(ジョージ・ボクア)
この段階でのもう1つのコツは、白黒で描くということです。優れたデザインは色のある、なしに影響されることはありません。しかも、白黒であれば作業が楽な上、クライアントは色に惑わされることなく、デザインそのものに集中できます。
少数の案だけを提示する
ロゴの案を数点作成したら、さらに絞り込んで作品を完成させ、クライアントに提示します。最初は、2つか3つぐらいの作品が良いでしょう。
「あまり多くの案を提示すると、クライアントは混乱します。クライアントは、デザイナーが最高のデザインを数種類選んで提示してくれるものだと信じています」(ジョージ・ボクア)
クライアントによっては、もっと多くの案の提示を求める場合もありますが、少数の力作は、中途半端なデザインが数多くあるよりはるかに効果を期待できます。
デザイン:ジョージ・ボクア
ミニマルロゴデザインのヒント
あくまでシンプルに
ロゴは、限られたスペースに入れる必要があるため、自然とミニマリズムのスタイルになっています。あまり多くの要素を詰め込むと、まとまりのないデザインになってしまいます。
フラットロゴデザイン(奥行きを加えない2Dのデザイン)も、ミニマルデザインのスタイルを維持できるという点で人気のあるデザインです。例えば、有名なナイキのロゴについて考えてみましょう。そのシンプルな形は、複雑でもなければ立体的でもありません。しかし、世界中で最も有名なロゴの1つとなっています。それは何よりも、デザインの強さと簡潔さによるものです。
簡潔さは色の使い方にも表れなければなりません。インテリアデザインのミニマリズムでは、モノクロの色合いがよく使われます。ロゴデザインも同じことです。コーポレートカラーを使うか、それとも白黒だけにしても良いでしょう。
幾何学模様を使う
「すっきりした幾何学的な模様を使い、そのアングルは45度から90度にします」(ジョージ・ボクア)
イラストを多く使った方法と異なり、ミニマルデザインのロゴは、すっきりとして、プロポーションの良い形を使います。プロポーションの良いシンプルなロゴを作るには、長方形、三角形、楕円形などの基本形を使います。黄金比などのルールに従えば、見る人の目に心地良く映る構図を構築できます。
スペースを活用する
「ミニマルデザインでは、スペースが非常に重要です」(セーラ・ジフロー)
ロゴに含める要素を最小限にとどめ、スペースを活かします。これにより、猥雑な感じになることを防ぐことができます。
限られたスペースを使うミニマルデザインでは、何もないスペースも重要な要素となります。図柄がある場合と同様に、図柄と図柄の間や空白の部分に注意を払いましょう。こうした部分を使って、ロゴの持つ意味合いとスペースを最大限に強調することができます。良く知られている「陰と陽」のシンボルは、何も無いスペースを使ってデザインの意味を表現する良い例です。
シンプルなフォントを使う
ロゴのデザインは、単にマークを作成することではありません。フォントも非常に重要で、ロゴの出来に大きな影響を及ぼします。多くのブランドは、ワードマークまたはレターマーク(企業の名前)をロゴに入れています。つまり、ブランドがすばやく認識されるためには、フォントが重要なのです。
「全体的なデザインに対して、調和の取れていないフォントを使用しているロゴが多くあります。フォントをまず決めましょう。それが全体的なデザインの土台づくりとなります」(セーラ・ジフロー)
ミニマルデザインのロゴでは、通常、飾りのないサンセリフ体のフォントが使われます。飾りのあるセリフ体のフォントの場合、それが余分なディテールとなり、昔風のフォントになってしまいます。しかし、飾りのあるフォントの方がブランドの名前やアイデンティティに適している場合もあります。字間やそれぞれの文字の形を変えるなど、スタンダードなフォントをカスタマイズしてみましょう。
デザイン:ジョージ・ボクア
ミニマリズムのアートをマスターする
「今までに世に出ていない物をデザインするのは、難しいことです。何もない状態からスタートしなければなりません。その場合、あまり色々な作品を見ないようにします。なぜなら、それが頭に残って、無意識のうちにデザインに影響を及ぼしてしまうからです」(ジョージ・ボクア)
あまり多くの作品を見過ぎてしまうと、そこから想像力を発揮するのではなく、かえってアイデアが限定されるように感じるかもしれません。
しかし、ムードボードを作成し、創造力を解放するためには、他の作品を見る必要があります。デザインのインスピレーションを得たいのであれば、Behanceを利用して、実際に使われている最新のロゴデザインを参考にしましょう。
個性的なロゴはすぐには出来上がりません。時間をかけてしっかりとリサーチを行い、何度もアイデアを出し、初めて素晴らしいものが生まれる、ということを覚えておきましょう。また、努力をすればそれ以上の成果を手に入れることができます。ブランドが認識されることが、ロゴの重要な役割です。時代を超え、個性的かつ効果的にアイデンティティを視覚化するためには、認識しやすくて記憶に残るミニマルデザインのロゴが適しています。
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