文章が読みやすくなる、おすすめフォントの選び方
フォントには雑誌・書籍などの長文向きのもの、記事やコピーなどの見出し向きのもの、
個性的なかたちで目を引かせるディスプレイ向きのものなど、用途・目的ごとにさまざまな種類があります。
ここでは長めの、読ませる文章に向く、本文用日本語フォントの選び方、考え方について紹介します。
読みやすいフォントとは?
読ませる文章に向くフォント、
つまり読みやすいフォントとはどのようなフォントなのでしょうか。
日本語は一般的に、漢字とかなを中心に「、」「。」などの約物を組み合わせて文章を作ります。このとき、漢字はおもに意味を伝える役割を担い、かなはそれを補うかたちで構成されると考えられており、漢字とかなの間に適度なメリハリをつけることが、読みやすさを考えるひとつのポイントになります。
縦組みの文章
横組みの文章
また、上から下へと流れる「縦組み」と、左から右へと流れる「横組み」、2つの配置(組版)方法があることも、日本語ならではの特徴です。
ここからは縦組みで読みやすいフォントと、横組みで読みやすいフォント、それぞれの特徴と組版方法について見ていきましょう。
縦組みの本文で読みやすいフォント
縦組みは行単位では上から下に、全体としては右上から左下へと文字が流れる組み方で、古くから日本語の標準的な組み方として定着していて、いまでも雑誌や書籍、新聞等で採用されています。
一般的に縦組みに向くと考えられているフォントには、「漢字に対して、かなが小さく」、「かなが縦長に設計されている」という特徴があります。
これは前述のように、日本語が漢字で意味を掴み、かなはそれを補うという役割があるため、はっきりと読みやすい漢字、それに対して控えめなかながその間をスムーズにつなぐ……という役割分担をすることで文章にリズムを持たせることができるからです。
漢字とかなの大きさが近いフォントの場合
漢字に比べて、かなが小さい・縦長のフォントの場合
本文の文字は8Q(2mm角)〜14Q(3.5mm角)のサイズで使われることが多いため、あまり太いフォントは向きません。文字が太くなると、テキストエリア全体に視覚的な圧迫感が生まれ、さらにその文字と認識させるための画線の空間的な余白が狭くなり、スムーズにその文字と認識しにくくなるからです。
縦組みの本文に使われるフォントはかつては明朝体が一般的でしたが、フォントの種類が増え、電子書籍などのスクリーンでの見え方も考慮しなければいけなくなった近年では、ゴシック体や丸ゴシック体も多く採用されています。内容によっては、いわゆる「デザインフォント」と呼ばれる文字が使われるケースもあります。
太いフォントで組んだ縦組み本文
丸ゴシック体の例
横組みの本文で読みやすいフォント
横組みは行単位では左から右へ、全体としては左上から右下へと文字が流れる組み方で、近年では主流となっている日本語の組み方です。
日本語の組み方が縦組み主体から横組み主体へと変化してきた要因は、日本語の文中に英数字の登場頻度が増えてきたことを受けて、横組みのほうが自然に日本語内に取り入れることができること、文字を見る機会がwebやメールのように横組みかつディスプレイでの表示に変わってきたことなど、さまざまですが、こうした流れを受けて、フォントのデザインもまた横組みに最適なもの、ディスプレイ表示に適性のあるものが作られるようになっています。
一般的に横組みに向くと考えられているフォントは、「漢字、かなともに字面が大きい」という特徴があります。字面とは文字一文字単位の枠(ボディ/原稿用紙の枠をイメージするとわかりやすいでしょう)に対して、文字が占める部分のことを指します。字面が小さいフォントはそのまま並べると(ベタ組み)文字同士の余白は大きくなり、フォントによってはパラパラとした印象になることがあります。
字面が大きいフォントで組んだ横組み本文(ベタ組み)
かなの字面が小さいフォントで組んだ横組み本文(ベタ組み)
字面が大きいフォントが横組みに向くとされるのは、文字間の余白が狭く、漢字とかなの高さも揃っていることで、行としてのカタマリが認識しやすくなり、目で追いやすいと考えられているからです。
縦組み同様、あまり太いフォントは向きません。特に字面が大きいフォントは隣同士の文字との余白も狭いため、細めのフォントのほうが読みやすく仕上げることができます。
読みやすさはフォント+組み方で決まる
文章の読みやすさとは、選ぶフォントだけで決まるわけではありません。
必ずしも、かなが大きいフォントは縦組みに向かない、字面が小さいフォントは横組みに向かないわけではなく、むしろその読みやすさを決めるのは、フォントの選択以上に組み方、つまり文字がどう並べられているかが重要です。
たとえば、隣同士の文字との余白(字間)と、次の行との余白(行間)が同じくらいだったらどうでしょうか。一見すると縦に読むのか、横に読むのかわからないかもしれません。読めても、その行を目で追い続ける際に前後の行が目に入り、視線が定まりにくくなってしまいます。逆に文字と文字の間が空きすぎていても、文字は追いにくくなります。
行間が極端に狭い例
字間が広い例
読みやすい文章とは、それにふさわしいフォントを選び、かつそのフォントのデザインでもっとも読みやすい流れを作ることで初めて実現できるものと言えます。
縦組みの本文では文字同士のボディを隙間なく均等に並べていくベタ組みが多く行われます。
横組みの本文の場合、字面が大きいフォントではベタ組みでもきれいなラインを出すことができますし、字面が小さいフォントを選んだ場合でも字間を詰めることで(ツメ組み)、目で追いやすい行のラインを作りだすこともできます。
横組み(ベタ組み)の例
左の例を行間を変えずに、ツメ組みにしたもの
いずれにせよ、文字間の空きに目を配り、読みやすい行のラインを作ること、行間を十分に取り行から行への推移をスムーズにすること。このふたつを考えることが重要です。
読みやすい文章にするためのアプリケーションの機能
Adobe IllustratorやAdobe InDesignには、組み方をコントロールするためのさまざまな機能が搭載されています。
字間や行間を細かくコントロールできるだけでなく、フォントの字幅情報等を使うことで字間の整ったツメ組みにする機能(メトリクスカーニング、プロポーショナルメトリクス)や、正確なベタ組みを行える機能(InDesignのフレームグリッド)が代表的で、こうした機能を活用していくことで、フォントの持つ特徴を、より活用できるようになります。
ベタ組みに最適なInDesignの「フレームグリッド」
フォント情報を使い字問を詰める「メトリクスカーニング」と「プロボーショナルメトリクス」
その他のおすすめ
製作者が無償で提供して自由に使うことのできるフリーフォントにも、多彩なデザインのフォントがラインナップされていて、上手に使いこなせば、より一層デザインの幅を広げることができます。
フォントには書籍のように長文に向くものもあれば、パッと見のインパクトを重視したディスプレイ用の書体など、実に多種多様なものが用意されています。ここではタイトルや見出しに向く、視認性の高いフォントの選び方、考え方について紹介します。
デザインをする際には、かわいいデザインにしたい、かっこいいデザインに仕上げたいと言ったイメージや、伝える目的にあったフォントを選択し、レイアウトをしていくことが大切です。
ここではフォントによってデザインに与えるイメージはどう変わるのかをご紹介します。
仕事の文書でフォントを選ぶ時、なんとなく好き嫌いで選んではいないでしょうか?実はフォントには、ひとつひとつ目的やデザインの意図が込められています。ここではビジネスシーンで使えるフォントについて基本的なフォントの分類を交えて紹介していきます。