ビジネスシーンに最適なフォントの選び方
私たちはいま、パソコン上で非常に多くのフォントを使うことができますが、その多さゆえになんとなく目についたフォントや、好き・嫌いでフォントを選んではいないでしょうか?
文字のかたちも多くのバリエーションがあり、そのひとつひとつに書籍向け、新聞向け、
サイン・ディスプレイ向けというように、目的やデザインの意図が込められています。ここではビジネスシーンで使えるフォントについて基本的なフォントの分類を交えて紹介していきます。
ビジネス&プレゼンテーション向きなフォントとは
ビジネスでフォントが重要な役割を持つシーンとはどのような状況でしょうか。
すぐに思いつくシチュエーションは、資料やプレゼンテーション、対外的に発信するドキュメントを作るときでしょう。渾身の資料も、すぐれた内容のプレゼンテーションも、見にくい・読みにくい・わかりにくい……では伝わりません。
では、どうすれば見やすく、読みやすいドキュメントになるのでしょうか。
デザインにおいて、文字の見やすさと読みやすさの大部分は、フォントの選択+文字の配置(組み方=文字のサイズや文字間・行間の設定など)でコントロールすることができます。
つまり、より読みやすい、見やすいフォントを使うことは、伝わりやすさを追求するうえで大きな一助となるわけです。これはビジネスドキュメントだけでなく、あらゆる文字のデザイン・レイアウトも同様のことが言えます。
まずは手始めとして、フォントをビジネスドキュメントに活かすための第一歩として、まずは自分が持っている、使うことができるフォントをまず確認してみましょう。
フォントはパソコンにもともとインストールされているものもあれば、アプリケーションに付属しているもの、購入して使うもの、フリーフォントとして配布されているものなど入手方法もさまざま。知らない間に増えていたということもあるでしょう。
自分の環境にあるフォントが確認できたら、その中からビジネスドキュメント向きな書体を探っていきましょう。
明朝体は横線の太さに注意
明朝体は、横画が細く縦画が太い、漢字の横線の端や角にウロコと呼ばれる▲状のおさえがあるといった特徴を持った書体です。
用途や目的によりデザインも多様で、たとえば縦組みの雑誌や書籍本文向けに作られた書体は、かなが漢字に比べて小さく、縦長に設計されていますし、新聞向けに作られた書体はかなが大ぶりで平たく設計されています(上下比率を圧縮した文字を平体といいます)。
游明朝体
文字のかたちも、落ち着きのあるものから動きのあるもの、かっちりとした硬い印象のものから筆の動きを生かした柔らかいものまでさまざまで、その文字から受けるイメージを、表現したいコンセプトにうまく重ね合わせていくことで、伝えたいメッセージをより強く伝えることができるようになります。
では、プレゼンテーションやビジネスドキュメントで明朝体を使うときにはどのようなところに気をつければよいでしょうか。
そのひとつが横線の太さです。資料やスライドをプロジェクターなどで投影してみせる際には、環境によって細線が非常に見えにくくなることがあるからです。こうしたシチュエーションでは、横線を太くした「横太明朝体」や、可読性・可視性を重視したUDフォントを使うようにすると読みにくさを軽減することができます。
DNP 秀英横太明朝
なお、明朝体の特徴として、
同じかたち(骨格)で太さが異なるセット(ファミリーと呼びます)の中から、太いフォントを選んだとき、縦線は太くなっても横線はさほど変わらないことがあります。
このため、必ずしも太いフォントなら読みやすいとも言えないことに注意をしましょう。
ゴシック体・丸ゴシック体は細すぎ・太すぎに注意
ゴシック体は、横画・縦画が同じような太さで設計されており、ドキュメントやプロジェクターでも安定した読みやすさがあります。
セザンヌ
ゴシック体の先端を丸めた丸ゴシック体も、同様にビジネスの現場でも使いやすいフォントと言えるでしょう。
TBUD丸ゴシック
いずれも細いものから太いものまで幅広い太さを持つフォントファミリーで構成されているものも多く、使用するサイズに合わせて適切な太さを選ぶことで見やすい、読みやすいドキュメントを作ることができます。
一般的に大きい文字や大事なポイントには太いフォント、小さい文字には細いフォントを使用しますが、このとき注意したいのは、明朝体同様その線の太さです。
小さい文字だからと言ってあまりに細いフォントを使ってしまうと環境によっては非常に読みにくくなることがあり、逆に太すぎるフォントも文字の中の隙間がはっきり見えずに文字がつぶれてしまいます。画面やプリントでは十分に読めても、プロジェクター等でははっきり見えないことがあるということを念頭に文字の太さを決めましょう。
場合によっては、大きい文字にはあえて細めのフォント使うことで線の見にくさを大きさでカバーするという方法も有効です。
筆書体フォント・デザインフォントはワンポイントで
楷書体、行書体、草書体といった伝統的な書法によって書かれた文字のフォントや、明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体等の分類に含まれない、いわゆるデザインフォントは、あまりビジネスシーンでは使われません。文章の見やすさ、見やすさよりも、目を引くこと、インパクトを出すこと、独特な表現を重視した文字のデザインが多いためです。
フォントが持つイメージをドキュメントに活かしたいという場合には、ワンポイントのキャッチや見出しだけに使うといった方法が有効です。
デザインフォント例:VDL メガ丸/ロゴナ/ロゴ丸Jr/ラインGアール/テラG
なかには分類上、デザインフォントに属しているものの、ビジネスシーンでも十分使えるゴシック体・丸ゴシック体風デザインフォントもあるので、使用する環境で見やすいかどうか、読みやすいかどうかを基準にフォントを選ぶとよいでしょう。
読みやすさ、見やすさにすぐれるUDフォント
これまでに紹介したフォント分類とは別に、判別しにくい文字をよりはっきりしたかたちにすることで、見間違えにくいこと、読み間違えにくいことを目指して作られたUDフォントというものもあります。
UD=ユニバーサルデザインとは、文化、言語、国籍、性別、障がいの有無、能力の差などを問わず、誰でも利用できることを目指した考え方です。
UDフォントは、視力が悪い人やその文字を見る環境によっては誤読しやすい文字でも、これまでのフォントよりも見やすい、読みやすい設計がされています。
たとえば、下図の例では、「口」の文字の下部の突き抜けをなくす、濁点、半濁点を大きくする、「3」と「8」を明確に見分けられるようにする、「C」「G」などの開口部を大きくするなどの処理が行われています。
左:新ゴ/右:UD新ゴ *新ゴはAdobe Fontsでは提供されていません
UDフォントは多くのフォントメーカーがリリースしており、種類もUD明朝体、UDゴシック体等さまざまです。該当フォントの多くは名前に「UD」がつけられており、一般のフォントと判別しやすくなっています。
ビジネスシーンにおいてもそのメッセージの受け手や環境は多種多様です。そうした際に、UDフォントを使うことは相手への配慮でもあります。Adobe Fontsでも日本語UDフォントが提供されているので、Adobe CCユーザーはぜひ試してみましょう。
その他のおすすめ
製作者が無償で提供して自由に使うことのできるフリーフォントにも、多彩なデザインのフォントがラインナップされていて、上手に使いこなせば、より一層デザインの幅を広げることができます。
デザインをする際には、かわいいデザインにしたい、かっこいいデザインに仕上げたいと言ったイメージや、伝える目的にあったフォントを選択し、レイアウトをしていくことが大切です。
ここではフォントによってデザインに与えるイメージはどう変わるのかをご紹介します。
フォントには雑誌・書籍などの長文向きのもの、記事やコピーなどの見出し向きのもの、目を引かせるディスプレイ向きのものなど、用途・目的ごとにさまざまな種類があります。ここでは長めの、読ませる文章に向く、本文用日本語フォントの選び方について紹介します。
フォントには書籍のように長文に向くものもあれば、パッと見のインパクトを重視したディスプレイ用の書体など、実に多種多様なものが用意されています。ここではタイトルや見出しに向く、視認性の高いフォントの選び方、考え方について紹介します。