企業がポッドキャスト配信をする意味 —音声アプリとの違いやファンの多い番組の作り方—
アメリカで人気のポッドキャスト(Podcast)をはじめとする音声配信。近年、日本でもじわじわと注目を集めています。
音声配信には、どのような魅力があるのでしょうか。企業がポッドキャストに挑戦する意味や理由を、ポッドキャストの基礎知識をおさえつつ、解説します。
ポッドキャストをはじめとする音声配信のリスナーは、日本でも増加傾向にあります。
TwitterやInstagram、YouTubeのように、企業がポッドキャストでの音声配信をするのが当たり前になる日は近いのでしょうか。
音声で情報発信をするメリットやポッドキャストを使ったコンテンツ制作のポイントを解説します。
2.アメリカと日本、ポッドキャストを取り巻く状況はどう違う?
4. ポッドキャストの特性を生かした情報発信をするためのポイント
1.少し複雑な「ポッドキャスト(Podcast)」の意味
「ポッドキャスト」はもともとAppleが生み出した造語
もともと「ポッドキャスト(Podcast)」という言葉は、2005年にApple社が発売した携帯型デジタル音楽プレイヤー「iPod」と、放送するという意味を持つ単語「Broadcast」を掛け合わせた造語です。
ポッドキャストが誕生したばかりの頃は、Apple社のメディアプレイヤー「iTunes」内に集約されたコンテンツでしたが、2018年に「iTunes」から独立し、「Apple Podcast」としてサービスをスタートしました。
「ポッドキャスト」が指すものにはいくつかの意味がある
このような歴史があるのと、iPhoneにはApple Podcastのアプリが搭載されているため、「ポッドキャスト=アプリ」として認識している方もいるかもしれません。
しかし、現時点のポッドキャストは、
1、インターネット上のポッドキャストアプリで聴くことのできる音声コンテンツ(Apple Podcast、GooglePodcastなどのアプリで聞ける番組の中身を指す)
2、世界的にもっとも拡散性の高い音声配信規格(RSSを通してマルチプラットフォームに拡散できる音声フォーマット)
の大きく2つの意味を持ちます。
マルチプラットフォームとはどういうことなのか、詳しくご説明します。そもそもポッドキャストは、配信者がmp3ファイル形式のアップロードを行い、リスナーが自分のデバイスにデータをダウンロード、またはストリーミングをすることで再生ができる仕組みになっています。
そのため、一度ファイルのアップロードを行うと、RSSフィードを通してさまざまなプラットフォームへ配信されるため、世界中にあるプラットフォームで再生できます。
一方で、1つのアプリの中で収録や再生が完結する「音声アプリ」では、その音声コンテンツを聴けるのは、そのアプリを使用しているリスナーのみ。
そのため、マルチプラットフォームへ拡散されるネットワークは、ポッドキャストの大きな強みと言えます。
例えるならば、WEBメディアが作成した記事が、Yahoo!ニュースやSmartNewsのようなプラットフォームにピックアップされ、より多くのユーザーに記事を読んでもらえるようなイメージです。
近年、ポッドキャストと大手プラットフォームの連携も進む
最近では、大手プラットフォームの参入によりポッドキャストの再生方法が拡充しています。
例えば、音楽ストリーミングサービス「Spotify」を運営する、Spotify Technology社は2019〜2020年にかけてポッドキャストのプラットフォームやパブリッシャーを4社買収。オーディオだけではなく、番組も一緒にコンテンツ化するという戦略のもと、ポッドキャストのプラットフォームに進化を遂げようとしています。
また、今までAndroidには公式のポッドキャストアプリはなく、非公式のアプリでしか再生できませんでしたが、2018年にGoogle社が「GooglePodcast」という公式のプラットフォームをリリース。
さらに2019年8月には、「ポッドキャスト検索」というサービスをスタートし、インターネット上での検索結果にもポッドキャストが表示されるようになりました。
2.アメリカと日本、ポッドキャストを取り巻く状況はどう違う?
アメリカではポッドキャストから映画になるほどメジャーな存在に
調査会社のユニゾンリサーチによると、2005年の誕生以降、アメリカでのポッドキャストの認知度が年々上昇傾向にあります。
背景にはiPhoneを代表とするスマートフォンの登場やプラットフォーム増加、デバイスの進化があると考えられますが、日本と大きく違うのはコンテンツの中身です。
特徴1、高クォリティのコンテンツの増加
アメリカでは、ポッドキャストリスナーの増加と同時に、ジャーナリズム性の高いニュース番組や小説のような物語など高いクォリティのコンテンツが増えていきました。
人気の物語が映画化されたケースもあるほど、多くの人々がポッドキャストに高い関心を寄せています。
特徴2、個人だけではなく、企業も多様な番組を配信
また発信の主体は個人だけではありません。企業が、音声のオウンドメディアとしてのポッドキャストを配信するケースも多々あります。
例えば、大手マッチングアプリのポッドキャスト番組では、プロフィール写真の選び方やデートコースの決め方といった恋愛テクニックを配信。番組の制作には、2019年に「Spotify」に買収されたオーディオに特化したパブリッシャーが携わっていて、コンテンツのプロ集団によって番組が作られています。
老舗アパレルブランドや車メーカーなど長年愛されている企業の場合は、そのブランドやメーカーの歴史、ストーリーを語るコンテンツが大人気です。他では聴けないエピソードや商品誕生の秘話など、ファンにとって魅力的な内容になっているので、リスナーの満足度も高く、エンゲージメントの向上にも繋がっています。
日本におけるオーディオコンテンツの現状
日本では長年オーディオコンテンツを聴く文化の中心はラジオでした。
その後、スマートフォンが普及してからは、アプリを使ったオーディオコンテンツが少しずつ増えていきました。現在、日本の音声プラットフォームの種類は大きくポッドキャストと音声アプリに分かれています。
そのうち音声アプリは、
・ユーザーの好きなタイミングで配信されている音声コンテンツを選んで聴くことのできる「オンデマンドアプリ」
・「radiko」に代表されるサイマルラジオ型のサービス「ライブストリーミングアプリ」
の2種類に分類されます。
また、オンデマンドアプリ、ライブストリーミングともに、ユーザーが投稿するタイプのものと、音声ニュースのようにパブリッシャーがコンテンツ提供するタイプに別れます。
とはいえ、アメリカに比べれば日本では音声配信に挑戦する企業もリスナーもまだまだ少ないのが現状です。
しかし、2020年にはTwitterも音声ツイートをスタートし、ポッドキャストは2020年中にさらなる配信プラットフォームのさらなる増加が予定されているそう。今後は、常に音声を聴くのが当たり前になる可能性も十分にあります。
3.企業がポッドキャストで配信をするメリット
音で聴くポッドキャストは、文章や画像、映像で伝えるのとはまた違う魅力があります。企業がポッドキャストの配信をするメリットについて整理してみます。
メリット1:ブランド認知力が高い
デジタルオーディオの広告を扱うアメリカのミッドロール社が、視聴率分析を行うニールセンを通じて行った調査では、「ディスプレイ広告に比べて、音声広告のブランド認知力は4.4倍高い」という結果が発表されています。
その理由は、
・音声で聴くことにより、内容を覚えている確率が高まる
・パーソナリティへの親近感が湧き、共感性をより持たせられる
からだとされています。
メリット2:制作コストが低い
ポッドキャストは動画や記事など他の媒体に比べ制作コストが低いこともメリットの一つ。社内で制作する場合、人件費を除く制作費は音声データをアップロードするサーバーコストのみ。配信量やプラットフォームによって月5万円程度で収まる場合もあります。
メリット3:すべての番組がアーカイブされ、いつでも聴ける
ラジオの場合、スポンサードした番組を聴き逃すと二度と聴取できません。しかし、ポッドキャストの場合は、すべてのエピソードがアーカイブされるため、数年経ってもリスナーに聴いてもらえる可能性があります。コンテンツとしてのアーカイブ性が高いのは、ポッドキャストならではの魅力です。
メリット4:発信者側が著作権を持つので、好きな場所へアップロードできる
4. ポッドキャストの特性を生かした情報発信をするためのポイント
ポイント1:リスナーの聴取環境とデバイスを考える
ワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーの登場など、リスナーのデバイスも日々進化しています。これらは、聴取環境やライフスタイルにも影響を与えるでしょう。
例えば、イヤフォンで聴く場合はパーソナライズされている内容に、スマートスピーカーで聴く場合は、家族でも共有できる内容または一緒に聴きたいコンテンツ……のように予想できます。
ポッドキャスト番組を制作する際には、どのようなシーンで聴かれるのか、どのようなデバイスで聴かれるのかも念頭に置いて考えてみましょう。
ポイント2:コンテンツやパーソナリティに明確なテーマをもたせる
ポッドキャスト番組を作るとき、企業のカラーやブランドの特性に合わせ、明確なテーマ性を持ってコンテンツを作る必要があります。WEBのオウンドメディア同様、どのような層に訴求したいのか、ターゲットとする人たちにとって有益な情報とは何かを整理し、番組の構成や具体案を展開することが大切です。
また番組内で誰が話をするのかという部分もブランディングに繋がります。認知度の高い人物だけでなく、タレント性のある社員などが登場してもおもしろいかもしれません。
ポイント3:目安時間として、20~30分を意識してみる
1回の配信時間は自由に設定できますが、20〜30分程の長さを意識して作られているケースが多くみられます。長尺の番組もありますが、限られた移動時間やスキマ時間で気軽に聴ける長さを想定することで、リスナーの聴取ハードルも下がります。
収録方法は様々で、2時間通して収録をし、20〜30分ずつに分割する番組もあれば、20〜30分ずつコンスタントに収録をする番組も。どのような喋り手を起用するのか、どのような収録の形を取るかは、企業のレベルや予算感に応じて変わります。
ポイント4:他社番組との差別化する工夫を
ポッドキャスト番組の場合、写真やデザインなど視覚的な要素はサムネイル画像のみ。耳に入る情報中心のコンテンツのため、他の番組との差別化には工夫が必要です。
取り組みやすい手段として下記の3点があります。
・番組オリジナルのジングルを作る
企業がポッドキャスト番組を作る場合、同じ番組だと記憶してもらうために、オリジナルのジングルを作ることが差別化に繋がります。オリジナルを作れない場合でも、フリー音源素材のサービスも増えているので、耳に残る音源を探してみましょう。また、Adobe Stockでもオーディオ素材を提供しています。
・タイトルディスクリプションを付ける
ポッドキャストは、RSSフィードで情報を送るので、タイトルディスクリプションをつけることが可能です。番組の聴きどころやエピソードをわかりやすく記載しておくことで、リスナーも内容を把握した上で聴取ができます。小見出しのように、何秒に何のはなしをしているかまで、細やかにテキスト化しておくことでポッドキャスト内のキーワード検索で表示される確率も上がります。
・番組詳細ページに紹介した情報をまとめる
番組の詳細ページに、その回に番組内で紹介したアイテムのリンクを貼っておけば物販への導線もスムーズに。リスナーにとって親切な情報発信を心がけることが番組の差別化へと繋がります。
ポイント5:リスナーを増やすための活動は必須
リスナーを増やすためには、番組の存在に気がついてもらうことが必要です。
企業がポッドキャストをスタートする場合は、メディアでプロモーションをして、まずは1回聴いてもらうきっかけ作りをしましょう。一度番組を聴取し、楽しんでもらえればアーカイブを遡る機会にも繋がります。既存の企業SNSアカウントに、ポッドキャストのリンクを挿入した投稿をアップし、拡散する動きは今までと同じく有効です。
最近では、ポッドキャスト番組をYouTubeで配信するケースも見られます。YouTubeの場合は、データをサイトにアップロードするためRSSの良さを活かしきれてはいませんが、認知される可能性の高い人気のあるメディアに投稿して、リーチ度を高めるというのもひとつの作戦になります。SNSやメディアと上手く組み合わせて、リスナーの獲得を目指しましょう。
5.音声配信の際に企業が気をつけたい注意点
文字や映像、写真での配信とも違う、音声配信。当然、注意すべきポイントも異なります。
注意点1:場合によっては、収録した音声の修正ができない
音声の場合、まったく編集ができないというわけではありませんが、前後のはなしの内容によっては難しい可能性もあるので、数字や名前など情報の正誤や不適切な発言には要注意。正確性が求められる内容に関しては、台本やメモを用意しましょう。
注意点2:配信内容はアーカイブされるが、時代に合わなくなる可能性も
ポッドキャストは、一度配信されたコンテンツはアーカイブされていきます。時勢によって価値観が変化することも考えられるので、過去のコンテンツの取り扱いには配慮も必要です。場合によっては、削除も検討しましょう。
注意点3:音声の著作権など、扱いに迷ったら監修を相談
また著作音源の使用はNGです。音源を使用する場合は、番組オリジナルのジングルや音楽を制作するか著作権フリーの音源を使用するかの二択になります。
企業の場合は、内容の監修やコンプライアンスのチェックをする機能を設けておくと安心です。
6. ポッドキャストをマネタイズへ結びつける方法
今までポッドキャスト単体で収益を生むことは難しく、マネタイズはポッドキャスト普及の課題と考えられていました。しかしアメリカでは、音声広告市場が広がり、以前に比べマネタイズの方法が確立されています。2017年には、3億1,400万ドル(日本円で約338億円)を売り上げ、2021年には10億ドル(日本円で約1060億円)に達する見込みに。
ポッドキャストでマネタイズを行う方法は主に下記の4点です。
方法1:タイアップ型のスポンサーとコンテンツ
番組内でスポンサーやその商品を紹介する従来型の広告の手法です。番組自体が広告クライアントと一体化しているスタイルになっているのが特徴で、ECとライブ配信の動画を掛け合わせた「ライブコマース」や、YouTuber・Instagramerが自分のアカウントで商品をPRする手法に近いイメージです。
方法2:スポット広告
音声番組のプレロール、ポストロール、ミッドロールに20秒〜30秒程度の再生課金型の広告を挿入するスタイルが主流で、TV番組の間に放映されるCMに近いイメージです。
方法3:ユーザー課金
ユーザー課金は、オンラインサロンやクラウドファンディングを使い、ファンが直接番組に課金ができるシステムです。
アメリカでは1万人を超えるリスナーを持つ人気番組が、ファンからの課金で月約650万の収益を上げているという実例も存在します。ファンコミュニティ型のマネタイズが実現するのも、配信者への求心力が高い音声メディアだからこそ。オンラインサロンの場合、ファン同士が交流できる場を提供することもできるので、ユーザー課金の方法としては相性が良く、今後日本でも、マネタイズ手段として期待されています。
方法4:自社の商品・サービスの購買へつなげる
物販のある購買型の企業は、ポッドキャストを使ってファンを作ることで直接的な売上に繋がると考えられます。しかし、具体的な商品を販売していない地方自治体や観光業界などでもポッドキャストに挑戦するメリットはあります。
音声広告はその場ですぐに買い物ができるオンライン広告とは違い、長いスパンを掛けて行動に繋がる傾向に。すぐに旅行や観光などの行動に繋がらなくても、何度も繰り返し聴くことで選択肢の候補として刷り込まれる可能性があるからです。企業の特性に合わせてマネタイズ方法を検討してみましょう。
7.企業のファンを増やすためにポッドキャストの有効活用を
アメリカでは広告媒体としても頭角を現しているポッドキャスト。テクノロジーやデバイスの進化で、今後もさらなる発展が期待できそうです。
番組制作に取り組みたいと思ったときに活用できるのが、音声編集ソフト「Adobe Audition(アドビ オーディション)」。ラジオ番組制作の現場でも使用されているプロユースのツールのため、本格的な音声編集ができます。
ブランディングやファンを増やすためのツールとして、企業にあったポッドキャスト配信にチャレンジしてみましょう。
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取材協力:八木 太亮
デジタル音声広告事業を展開する”オト”×アドテクノロジーを強みとする音声広告会社、株式会社オトナル代表取締役。デジタル音声広告に特化したマーケティング&メディアカンパニーとして、音声メディアを通じた企業のマーケティング活動をサポートしている。
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(執筆:ユウミ ハイフィールド 編集:ノオト)
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