クリエイティブなビジネス⽂書を作るためのヒント
このコラムでは、「クリエイティブなビジネス⽂書を作るためのヒント」と題して、「提案書」「企画書」「プレゼン」の3 つの⽂書を取り上げ、それぞれの役割と、どのようにクリエイティブな⽂書に仕上げていくかについてお伝えしています。
第1 回⽬では、ビジネスの最初のステップとして、顧客の課題を解決するためのアイデアを提⽰し、相⼿をその気にさせる「提案書」の作り⽅についてお伝えしました。今回は、そのアイデアを実現するための「企画書」の作り⽅についてお伝えします。顧客を「その気にさせる」提案書と違い、企画書は上司や関係者を「納得させる」ことが重要になります。
重要なのは「説得⼒」と「信頼性」
前回、「会議の無駄をなくす」という課題を顧客に提⽰し、それを解決するための施策としてIT サービスの導⼊を促す提案書を作成しました。提案先の反応も良く、いよいよ「企画」として具体化するタイミングとなりました。さっそく企画書をまとめて、上司から承認をもらいたいところですが、提案書レベルのおおまかな内容では、なかなか上司を説得するのは難しいでしょう。
顧客にとっては、そのサービスが⾃社にとってどれくらいのメリットをもたらすか、それが⼀番気なるところでしょう。しかし、上司が気なるのは、そのサービスが何であって、誰にどのように販売し、どれくらいの期間と費⽤がかかって、どれくらいの収益が⾒込めるかです。それらを単なる思いつきだけでなく、しっかりとした裏付けとともに提⽰する必要があります。
また、企画書は「企画を通す」ことだけが⽬的ではありません。実際にプロジェクトがスタートした後、そこに携わる関係者がプロジェクトの概要、プロセス、スケジュール、コストなどを把握し、お互いが共通意識を持って業務を進めるための、いわばプロジェクトの設計図となるものです。いくら上司を説得できても、書かれている内容に「信頼性」がなければ、実際の現場で混乱を招くことになりかねません。
企画はCTPT で考える
では、納得させる企画書を作成するには、どのような点を考慮すれば良いでしょう。読み⼿の興味を徐々に喚起させていく「ストーリー作り」が重要であることは、提案書の作り⽅でもお伝えしました。それは企画書でも同じことが⾔えますが、提案書と⼤きく異なるのは、⽬的をより明確にし、ロジックに沿ったストーリーを組み⽴てることが重要になります。
企画書のストーリー作りによく⽤いられる⼿法が、「CTPT」です。CTPT は、C(コンセプト)、T(ターゲット)、P(プロセス)、T(ツール)の4 つを軸としたフレームワークで、これらを整理することで考えがまとめやすくなります。
C:コンセプトとT:ターゲット
コンセプトは、プロジェクトの概要を説明するもの。どんなサービスを提供するのか、ここをまず明確にする必要があります。次に、どんな顧客または⾒込み客に提供するのか、ターゲットを絞り込みます。
このコンセプトとターゲットが合致‧整合して初めてその企画が検討されることになります。いくら優れた技術であっても、ターゲットのニーズに合わなければ意味がありません。「リモートで会議が開ける」と強調しても、もともと1 つの部屋に集まって仕事をしている⼈たちにはあまり響かず、興味を⽰してはくれないでしょう。
また、ただ「会議が多い会社」というだけでなく、「事業所が各地に点在している」、「外回りや出張が多い」、「テレワークを実施している」といったように、よりターゲットを細分化し、その現状に即したベネフィットを伝えることが⼤事です。
P:プロセスとT:ツール
コンセプトとターゲットの整合がとれたら、次に考えるのが具体的な顧客接点の作り⽅。ここでいうプロセスとは、どのような段取りで顧客との接点を作るか、その⼯程を指します。そして、ツールはプロセスを実施するための⼿段です。
たとえコンセプトとターゲットが明確であっても、顧客の⼼理段階に合わせたマーケティングを展開しなくては、なかなか実際の購⼊には結びつきません。顧客や⾒込み客に⾏動を促す⼿段として、AIDMAに合わせたプロセスとツールを展開するのが効果的です。
現状分析で説得⼒アップ
企画の裏付けとして必要不可⽋なのが、現状分析です。市場データや競合他社のデータなど、客観的な事実やデータをもとに分析することで、受け⼿にもわかりやすく、企画⾃体の説得⼒もアップします。また、これらの分析をおこなうことで、⾃社サービスの課題も明確になり、この時点で企画の改善点も⾒つけることができます。
現状分析には各調査機関のレポートを引⽤したり、市場‧顧客(Customer)、競合(Competitor)、⾃社(Company)の視点から課題を⾒つけ出す「3C分析」や、内部要因(強み‧弱み)と外部要因(機会‧脅威)から課題を探す「SWOT分析」といったフレームワークを活⽤したりするのも有効です。
デザインはPARCで描く
CTPTで組み⽴てたストーリーをもとに、⽂書を作成していきましょう。できるだけ⽂字量を減らし、写真やインフォグラフィックを⽤いたビジュアル作りを⼼がけるのは、企画書も提案書も変わりありません。とはいえ、より詳細なデータや具体的なプランを明記しなければならない企画書は、提案書に⽐べて情報量は多くなってしまいます。
多くの情報をより⾒やすく、わかりやすく整理するのに有効なのが、デザインの4⼤原則と呼ばれる「PARC」です。「Proximity:近接」「Alignment:整列」「Repetition:反復」「Contrast:強弱」の4つの原則に分けられ、デザイン経験のない⼈でもこれを理解するだけで、伝えたいことを格段に分かりやすくまとめることができます。
Proximity:近接
近接とは、関連する要素をまとめてグループ化することです。例えば、写真とキャプションが離れすぎていたり、別のグループの要素とくっつき過ぎていたりすると、読み⼿の混乱を招きます。
同じグループの要素は近くに配置し、それぞれのグループ間の距離は少し⼤きめに取ることで、情報の関連性が⼀⽬で理解できるようになります。
Alignment:整列
各要素の位置やサイズ、揃えなどがバラバラだと、まとまりのない⾒づらいレイアウトになってしまいます。企画書の場合、⽂字やオブジェクトは左揃えを基本とし、きちんと揃えて配置しましょう。また、周囲や項⽬の間に⼗分な余⽩(マージン)をとることで、全体の圧迫感がなくなり、情報の視認性が⾼まります。
要素を⾒た⽬で配置していくと、多少なりともズレが⽣じます。PowerPointやIllustratorを使⽤する場合、ドキュメントにガイド線を引いて、それを⽬安に要素を配置していくと良いでしょう。また、選択した要素を上下または左右に均等に揃える「整列」機能なども便利です。
Repetition:反復
デザイン上の視覚的要素を繰り返し⽤いることで、⽂書全体に⼀貫性や統⼀感を持たせることができます。
反復させるものとして、タイトル∕⾒出し∕本⽂の書式や位置、⽂章の⾏間幅、要素同⼠の間隔、罫線の太さ、背景や図の⾊、といったものがあります。これらを全てのページにわたって繰り返すことで、読み⼿に「この情報はこの位置にある」ということを無意識に理解させ、スムーズな閲覧を促進する効果があります。
Contrast:強弱
上記の「反復」によって⼀貫性や統⼀感を持たせることができますが、情報には優先度があり、重要な情報が⽬⽴つようにデザインに強弱をつけることも⼤事です。
⽂字の場合、フォントは1種類に限定し、サイズや太さ、⾊を変えることで強弱をつけましょう。グラフ内の数値などは、数字だけを⼤きく太くするのもインパクトがあって効果的です。
⾊を変えて強弱をつける場合は、⽂字⾊(黒)以外にメインカラーとアクセントカラーの2⾊までに抑えましょう。⾊を使い過ぎるとかえって強調したい部分が⽬⽴たなくなってしまいます。
通常、強調したい部分にはアクセントカラーを使いますが、メインカラーの反対⾊を選ぶのがより強弱の差がつきやすくなります。⻘と⻩⾊、⾚と緑が主な反対⾊とされています。また、同じ⾊の濃度を変えることで強弱をつけるのも良いでしょう。
フォント選びで説得⼒も上がる?
企画書に限らず、ビジネス⽂書を作成するうえでフォント選びは重要です。読みづらい⽂字はストレスを感じる原因となり、読み進める気が起こらなかったり、内容が頭に⼊らなかったりすることもあるでしょう。
通常はパソコンに標準で搭載されているフォントを使われることが多いと思いますが、種類も少なく、可読性が⾼いものが揃っているとはいえません。そこで、Adobe Fontsといったオンラインのフォントサービスを利⽤してみるのも良いでしょう。
Adobe Fontsは、Creative Cloudが提供するサービスの1つで、プロのデザイナーに愛⽤されているモリサワフォントをはじめ、17,000種類以上もの⾼品質なフォントを好きなだけ選んで使⽤することができます。Adobe Fontsは、IllustratorやPhotoshopなどのアプリから直接利⽤できるほか、PowerPointやWordでもフォントの利⽤が可能です。
相⼿を納得させるには
ロジックに沿ったストーリーを組み⽴てるための「CTPT」。多くの情報を⾒やすく、わかりやすくまとめるための「PARC」。これらのマーケティング⼿法およびデザイン⼿法を⽤いて、上司も関係者も納得する「説得⼒」と「信頼性」のある企画書作りを⽬指してください。
次回は、提案‧企画から⽣まれた⾃社サービスを、多くの⼈にアピールするためのプレゼン資料の作り⽅についてお伝えします。
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