企画書とは、新しいアイデアや施策を提案する文書のことです。
イベント企画書、マーケティング企画書、営業企画書など、企画書には様々な種類があります。
企画の説得力は、企画書のクオリティによって大きく変わります。
そのため、企画が採用されるかどうかは、企画内容そのものだけでなく、企画書の出来によっても左右されると言ってよいでしょう。
しかし、いざ企画書を作るとなると、以下のような悩みが出てくるのではないでしょうか。
・どのような構成がよいかわからない
・アイデアをうまく整理できない
・稟議が通るような企画書の書き方がわからない
そこで今回は、説得力がある企画書の構成、アイデアを整理する方法、企画が通りやすくなるポイントなど、企画書作成を成功させるためのノウハウをわかりやすく解説していきます。
ぜひ本記事を参考にしながら、ワンランク上の企画書を目指してください。
説得力のある企画書の作成方法
はじめに、企画自体の立て方と合わせて、企画書の作成方法を解説していきます。
「良い企画書」は、内容がわかりやすく、説得力と納得感がある企画書です。
構成要素は、主に以下の3つです。
1.企画の目的、概要
2.現状分析、課題
3.施策の詳細
それぞれの中身について詳しく見ていきましょう。
1.企画の目的、概要
はじめに、企画書の結論となる「企画の目的、概要」を記載しましょう。
冒頭に結論が示されていれば、読み手は企画書の全体像を把握できるので、そのあとの内容をスムーズに理解しやすくなります。
「企画の目的」は、なるべく具体的な数値を入れて記載しましょう。
「企画を採用することにどのようなメリットがあるのか」を、読み手がイメージしやすくなるからです。
そして「企画の概要」として、「目的を達成するためにどのような施策を実施するのか」を示します。
まずは大まかな全体像を示し、詳しい内容は「施策の詳細」のパートで記載しましょう。
以下の画像は、コーヒーショップでキャンペーンを企画する場合の目的、概要の例です。
2.現状分析、課題
続いて、企画の背景となる「現状分析、課題」を記載しましょう。
このパート次第で、企画の説得力が大きく変わります。
なぜなら、現状分析や課題は、なぜその企画を実施するのか(目的)、その企画で何を実施するのか(施策)を裏付ける根拠となるからです。
もう一度、コーヒーショップの例で考えてみましょう。
もし自店の具体的な課題が明確でないまま、「売上を〇%アップさせるためにクーポンを発行したい」と本部の上司に提案したら、相手はどう思うでしょうか。
「なぜ売上を○%アップさせる必要があるのか」「本当にクーポン発行が売上アップに効果的なのか」が不明確なため、説得力や納得感のある企画だと感じてもらうことは難しいでしょう。
しかし、「近隣に競合店がオープンし、自店の売上が落ちている」という事実があり、そのことについて詳しくデータ分析しており、課題も明確になっていたらどうでしょう。
相手は企画のメリットを理解し、施策の詳細に興味をもってくれるようになるはずです。
では、現状分析や課題の設定は、どのように行えばよいでしょうか。
オススメのフレームワークとして「3C分析」をご紹介します。
3C分析を行う方法
3C分析とは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の観点から現状を分析する方法です。
この3つの観点は、自社の課題を考えるうえで特に重要な要素となっています。
3C分析を用いることで、客観的でバランスのとれた現状分析をすることができます。
それぞれの観点で分析すべき内容は以下のとおりです。
1.Customer(顧客)
顧客はどのような特性やニーズをもっているかを分析します。
顧客について理解を深めることで、どのような施策が効果的なのかが検討しやすくなります。
2.Competitor(競合)
競合はどの会社なのか、どのような強みや弱みがあるのかを分析します。
競合他社の商品やサービスを試してみたり、店舗へ足を運んでみたりすることも有効です。
3.Company(自社)
自社が抱えている課題は何か、どのような強みや弱みがあるのかを分析します。
自社の主観的な視点だけではなく、競合他社と比較しながら考えると、自社をより客観的に捉えることができます。
では、この3C分析を用いて現状分析をしてみましょう。
コーヒーショップの例に当てはめてみると、以下のようになります。
このように、3Cの項目ごとに情報を整理してみましょう。
なお、この例はわかりやすく簡略化したものです。
実際の現状分析では、なるべく多くの客観的なデータを収集してください。
現状分析することで、自社が置かれている状況が明らかとなり、どのような課題があるのかが見えてきます。
上記の例であれば、「競合店よりも価格帯が高いため、顧客が他店に流れてしまっている」という課題があることがわかります。
現状分析の結果と、そこから浮き彫りとなった課題を記載してください。
その課題を解決する手段として、以下の「施策の詳細」へとつながっていきます。
3.施策の詳細
いよいよ企画の中身となる「施策の詳細」を記載します。
課題を解決し、企画の目的を達成するため、具体的にどのようなアクションを行えばよいかを示します。
企画内容を整理するには、「6W2H」のフレームワークが便利です。
コーヒーショップを例とすれば、以下のようになります。
このように、6W2Hで言語化された企画内容となっていれば、資料の読み手が理解しやすい企画書を作成できます。
それぞれの項目でどのようなことを記載すればよいか、以下で詳しく見ていきましょう。
1.Why(目的)
「企画の目的、概要」でも触れた企画書の目的を、あらためて詳細に記載します。
企画を実施すると相手にどのようなメリットがあるのか、できれば具体的な数値を入れて示しましょう。
また、なぜこのような目的を設定したのかを、現状分析の結果を根拠として説明します。
2.Whom(対象者)
企画の対象者は誰であるかを記載します。
顧客向けの企画であれば、対象となる顧客の属性、特徴、ニーズなどを示しましょう。
なぜこの対象者を選んだのか、この対象者を選ぶことでどのような利点や機会があるのかも説明します。
3.What(施策)
課題を解決するための施策について、具体的な内容を記載します。
つまり、ここで記載するのは、何を実施するかというアクションプランです。
なぜこの施策が有効であるのか、目的との関連性を論理的に説明しましょう。
例えば、「売上を〇%アップさせる」という目的に対して、「クーポンを発行する」という施策を提案しただけでは、目的と施策との間にどのような関係があるのか明確になっていません。
この場合には、次のような説明が必要でしょう。
クーポンを発行することで、自店の弱みである価格帯の高さをカバーできる。
その結果、競合店への顧客流出を防ぐことができるので、売上アップにつながる。
4.Who(担当者)
企画の担当者や関係者を記載します。
各メンバーの役割や責任の範囲、チーム体制などについて説明しましょう。
5.When(実施期間)
企画を実施する期間について記載します。
目的を達成するまでのスケジュールを示し、必要に応じて中間目標を設定します。
そうすることで、目的を達成するまでの進捗状況を見通せるようになります。
6.Where(実施場所)
企画を実施する場所について記載します。
店舗やイベント会場などの場合は、必要に応じて住所やアクセス方法などを示します。
オンラインで実施する場合は、使用するツールやWebサイトのURLなどを記載します。
7.How(実施方法)
企画をどのような方法で実施するかを記載します。
具体的なプロセスや手順、使用するツールやリソースなどについて説明します。
実施方法を詳細に示すことで、実施計画をより具体的にイメージしやすくなります。
8.How much(予算)
企画の実施にどれくらいの予算が必要かを記載します。
総額だけでなく、何にどれだけの費用がかかるのか、その項目や内訳も示しましょう。
例えば、広告費、人件費、物品購入費など、必要な項目ごとに費用を明示することで、見積もりやリソース配分を適切に行うことができます。
企画が通りやすくなるポイント
続いて、企画が通りやすくなるポイントをご紹介します。
結論としては、「徹底的に相手の立場を考えて企画する」ということです。
当然ながら、企画を採用するかどうかの決定権は相手にあります。
そのため、相手に寄り添って企画を考えることが重要です。
相手の要望に沿って企画する
企画を立てる目的は、自分の企画を相手に採用してもらうことです。
そのために最も大事なことは、相手の要望にあった企画を提案するということです。
どれだけ優れた内容の企画であっても、相手にメリットがなければ採用されることはありません。
企画書を書く前に、相手の要望を十分にヒアリングして、相手がどのようなことを望んでいるのか把握しましょう。
ただし、相手が希望するまま、それに従うだけの「御用聞き」になるのもよくありません。
ときには、本来の目的から逸れた要望が出てくることがあります。
そのような場合は、こちらから積極的に提案して、相手がまだ気付いていないニーズを掘り起こすことも重要です。
相手に合わせた伝え方をする
相手の性格や価値観によって、提案方法を工夫することも必要です。
例えば、相手が論理を大事にするタイプであれば、企画のコストパフォーマンス(費用対効果)や、客観的なデータなどを詳しく示すことで、採用される可能性が高まるでしょう。
相手が感情を大事にするタイプであれば、自分の熱意をストレートに伝えたり、企画に込めた想いを共有して一体感を演出することが有効なケースもあるでしょう。
また、相手が重視している判断軸を踏まえて企画することも重要です。
「とにかく成果が大事」「できるだけ費用を抑えたい」「なるべく急ぎで進めたい」など、相手がどのような軸を重視しているかを確認しましょう。
相手の状況に寄り添い、柔軟に企画内容をカスタマイズすることで、採用率がグッと高まる場合があります。
伝わる企画書を書くための3つのポイント
企画書の主役はズバリ「文章」です。
どんなにすばらしい企画であっても、文章が読みづらいと魅力が半減してしまいます。
以下で、誰でもカンタンに実践できる書き方のコツを3つご紹介します。
1.要点を明確にする
要点が明確に書かれた企画書は、読み手の印象や記憶に残りやすくなります。
要点を明確にするには、すべての情報を並列に記載するのではなく、情報の重要度がわかるように重み付けをする必要があります。
中心となるメッセージと、それを補足する文章は、分けて記載しましょう。
なお、Microsoft PowerPointのようなスライド形式で作る場合は、「ひとつのスライドにひとつのメッセージ」を原則とすれば、要点が明確な企画書に仕上がります。
2.わかりやすい言葉を選ぶ
凝った表現や難解な言い回しは避け、誰にでもわかりやすい言葉を選択します。
そのほうが読みやすい文章となり、読み手が内容を理解しやすくなります。
また、専門用語の使用にも注意が必要です。
相手の知識レベルを想像し、必要に応じて用語の意味を補足したり、別の言葉に置き換えたりしましょう。
3.文章は簡潔に書く
冗長な文章は読みにくく、読み手の印象を悪くしてしまいます。
文章はなるべく短く簡潔に書きましょう。
ひとつの文に複数の意味を詰め込みすぎず、適度に文を分けることで読みやすくなります。
また、「~こと」「~という」といった表現は冗長な印象になりやすいので、必要なければ省いたり言い換えたりしましょう。
■NG例
来月オープンする競合店は、自店よりも価格帯が低く、自店の顧客が流れてしまうリスクがあるが、クーポンを発行することによって価格帯の高さをカバーすれば、競合店に顧客が流出するというリスクを軽減できる。
■OK例
来月オープンする競合店は、自店よりも価格帯が低く、自店の顧客が流れてしまうリスクがある。
しかし、クーポンの発行によって価格帯の高さをカバーすれば、競合店に顧客が流出するリスクを軽減できる。
企画書を見やすく整える3つの法則
続いて、資料の見た目を整える方法をご紹介します。
ただし、企画書が採用されるかどうかが、見た目の装飾によって左右されることは基本的にありません。
デザインを派手にする必要はなく、シンプルで見やすいデザインさえ意識しておけば大丈夫です。
企画書で重要なのはあくまでも「中身」の情報です。
見た目の装飾に時間をかけることは本末転倒ですので、気を付けてください。
1.フォントは読みやすいものに統一する
企画書作成では、読みやすいフォントを選ぶことが重要です。
また、フォントはできるだけひとつに統一しましょう。
意図もなく複数のフォントが混在していると、読みづらくなるだけでなく、資料が洗練されていない印象を与えてしまいます。
フォント選びに困ったら、まずは各OSに最初から用意されている以下のフォントを選びましょう。
■各OSで用意されているオススメフォント
1.メイリオ(Windows)
Windows用のフォントで、丸みを帯びた形状と幅広なつくりが特徴です。
モニター画面でも紙面上でも視認性が高く、読みやすいフォントです。
2.游ゴシック(Windows&Mac共通)
WindowsとMacの両方で使用可能なフォントです。
字面が小さめで文字間に適度な余白があるため、小さなサイズで使っても一字一字をはっきりと識別できるのが特徴です。
Medium以上の太さで使うことで、視認性が向上します。
3.ヒラギノ角ゴ(Mac)
AppleのMacOSやiOSに標準搭載されているフォントです。
やや大きめの文字面が特徴で、現代的で明るさを感じるオーソドックスなフォントです。
ウエイト(太さ)のバリエーションが豊富で、デザインの用途に応じて最適な太さを選べます。
フォントについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
2.配色は4色以内に抑える
スライド資料に使用する色は、文字色を含め4色(3色+文字色1色)に抑えましょう。
配色は企画書の見た目を左右する重要な要素ですが、色は増えれば増えるほどコントロールが難しくなります。
そのため、慣れないうちは、色数を多くても4色(3色+文字色1色)以内に抑えましょう。
4色のうち3色は「ベースカラー」「メインカラー」「アクセントカラー」という3つのカラータイプを指します。
それぞれのカラータイプの解説は、以下をお読みください。
1.ベースカラー
スライド全体の背景色や基調となる色です。
一般的に、スライド全体の70%程度を占めます。
黒・白・グレーといった、ニュートラルカラー(無彩色)が選ばれることが多く、文字色が黒の場合、白やグレーを用います。
2.メインカラー
スライド全体で最も目立ち、スライドの印象に大きく影響する色です。
一般的に、スライド全体の25%程度を占めます。
例えば、この記事で挿入されているスライドは、背景色が白のスライドですが、メインカラーは茶色です。
そのため、この記事を読まれた方は、スライド内の茶色の印象が強く残っているはずです。
メインカラーは、タイトルや見出しをはじめ、強調したい箇所で用いられます。
通常、製品のブランドカラーやコーポレートカラーなどがよく使われるため、社内向けの資料であれば自社のカラーを、社外向けの資料であれば相手の会社のカラーを選ぶとよいでしょう。
ただし、ブランドカラーが鮮やかすぎる場合は、メインカラーとして使いづらい場合があります。
その場合は、メインカラーの彩度を少し下げるか、白を混ぜるなどして、適宜カラーバランスを調整してください。
3.アクセントカラー
メインカラーを既に使っていて、スライドの一部をより目立たせたいときに使う追加色です。
例えば、この記事で挿入されているスライドでは、オレンジ色がアクセントカラーとして使われています。
アクセントカラーは目立つ分、使い過ぎは禁物です。
スライド全体の5%程度を占めるイメージで使いましょう。
3.レイアウトデザインの4原則を意識する
見やすく洗練された企画書を作るためには、以下に挙げる「レイアウトデザインの4原則」を意識することが大切です。
1.整列:要素を揃える
2.近接:関連する情報は近づける
3.反復:要素や特徴を繰り返す
4.対比:情報の優先度に合わせて強弱を付ける
1.整列
「整列」とは、文章や図表・画像の位置を揃えて配置することです。
きちんと整列させた情報は、見やすく整った印象になるだけでなく、情報の構造がわかりやすくなります。
PowerPointを使用してスライド資料を作成する際は、ガイド線(グリッド線)を表示しながら作業すれば、カンタンに整列できます。
2.近接
「近接」とは、関連する要素をグルーピングすることです。
グルーピングすることで、情報のまとまりや流れを伝えやすくなります。
関連性の高い要素は近づけ、関連性の低い要素は意識的に離して配置しましょう。
3.反復
「反復」とは、要素や特徴を繰り返すことです。
資料内で共通のデザイン要素(色、形、フォント、レイアウト)を反復することで、統一感が生まれ、洗練された印象が高まります。
4.対比
「対比」とは、情報の重要度に合わせて強弱を付けることです。
重要な情報は目立つようにデザインし、それ以外の情報は控えめにします。
対比を用いることで、デザインにメリハリが生まれるだけでなく、重要なポイントをすぐに把握できるようになります。
ここまで、企画書作成のノウハウを解説してきました。
この記事の内容を参考にして、採用される企画書を目指してください。
最後に、完成した企画書を共有する際のポイントをご紹介します。
企画書はPDFで共有しましょう
企画書を共有する際には、ファイル形式にも気を遣いましょう。
そこでオススメしたいのが、PDF形式での共有です。
PDFにした文書は、改ざんされにくく、フォントやレイアウトがデバイスやOSなどの環境に影響されないため、特に社外の人に共有する際にオススメです。
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(執筆:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
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