業務効率化の手法と進め方とは?基礎知識と現場で役立つアイデアを紹介
「作業にばかり追われて、肝心な業務になかなか取り組めない」
「毎日の業務に追われて、自分の時間がどんどん減ってしまっている」
「チーム全体の生産性がなかなか上がらない」
業務が複雑化する昨今、こうした悩みをもつ方は多いでしょう。もし日頃こうした悩みがあるのなら、それらを解消する「業務効率化」が必要です。
「業務効率化」というのは、その名のとおり「業務」を「効率化」することです。しかし、一口に「業務」といっても様々なものがあり、業界・業種によってその内容は大きく異なります。
そこでこの記事では「業務効率化」をテーマに、どんな業界・業種であっても使える業務効率化の成功メソッドをわかりやすく解説します。業務効率化が進むと仕事が滞らなくなり、ミスやストレスが減ります。また、時間にも余裕ができ、仕事とプライベートを両立しやすくなるでしょう。
この記事を読めば、業務効率化における本質的なノウハウが理解でき、何をどのような手順で実行すべきかがわかります。業務効率化に役立つツールもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも「業務効率化」とは?
今回はどのようなケースにも当てはまるように「業務効率化」の抽象化から始めます。業務効率化とは、業務における以下3つの要素を解消することです。
- 業務における「ムリ」を解消すること
- 業務における「ムダ」を解消すること
- 業務における「ムラ」を解消すること
このムリ・ムダ・ムラ、通称「3M」を無くすことが、どの業界・業種にも共通する「業務効率化」です。そして3Mを無くし、より少ない時間・コストで同じ成果を達成することが、業務効率化のゴールになります。
なお、業務効率化と似た言葉として「生産性向上」がありますが、生産性向上は「より少ないリソースで、より多くの成果を上げること」を指し、異なる概念です。
ちなみに「業務効率化」と聞くと、ひとつの課題だけを改善することだと捉える方が多いかもしれません。しかし、実はこれら3Mは同時に発生しているケースもあり、解決すべきことが相互に関係しています。そのため、単独の課題であると捉えると失敗してしまうのです。
では次に、この3M(ムリ・ムダ・ムラ)とは具体的にどのようなものなのか、確認していきましょう。
業務における「ムリ」な作業とは
ムリとは「筋道が通らないこと。行うのが非常に難しいこと」です。
業務においていえば、あらかじめ定められた、もしくは決められたリソースの中で実現できないことをやろうとしている状況、といえます。具体例は以下のとおりです。
▼「業務におけるムリ」の具体例
- あまりにも高すぎる目標で達成できない
- 業務に必要な設備が整っていない
- 必要最低限の人員が確保できていない
業務における「ムダ」な作業とは
次に、業務の「ムダ」についてみていきましょう。
ムダとは「役に立たないこと。それを実行するだけの価値がないこと」です。つまり、業務においては「不必要な作業や、費用対効果が低いこと」を指します。具体例は以下のとおりです。
▼「業務におけるムダ」の具体例
- 複数回にわたって、重複して作業している
- 集計や分析を手作業で行っている
- 実際には使用しない書類を形式的に作成している
業務における「ムラ」がある作業とは
次に、業務の「ムラ」についてみていきましょう。
ムラとは「色の濃淡が一様でないこと。物事が安定しておらず、不揃いであること」です。業務においては「労力や品質にバラツキ」があることを指します。具体例は以下のとおりです。
▼「業務におけるムラ」の具体例
- 特定の部署や担当者に業務が集中している
- 月初や月末など特定の期間に作業が過集中してしまう
- 関わる担当者によって、対応や製品の品質に差が生まれている
これらの具体例を見て、なかには心当たりがある人もいるかもしれません。こういった3Mが生じると、長時間労働や生産性の低下、品質の低下などにつながってしまいます。
では、これら3Mはなぜ発生してしまうのでしょうか?
適切に業務効率化を進めるために、続いては3Mが発生・持続してしまう原因を押さえましょう。
3M(ムリ・ムダ・ムラ)が発生する原因
3M発生の原因は以下の3つです。
- 組織体制・業務習慣による原因
- 心理的な原因
- 外部環境の原因
業界・業種によって様々なケースが考えられますが、基本的にはこれら3つの原因に集約されます。では、それぞれの原因について詳しく解説します。
組織体制・業務習慣による原因
ひとつ目が「組織体制・業務習慣による原因」です。人材の配置や業務の決まりごとなどから3Mが生じているケースです。さらに細かく分解すると、以下4つの要素が原因となり3Mを発生させています。
- 報告・連絡・相談などのコミュニケーションが不足している
▼具体的な3Mの例
ムリ:必要な情報を知らされておらず、作業が進められない
ムダ:情報の共有不足で、同じ作業を複数回行ってしまった
ムラ:特定の担当者に情報が集中し、担当者の不在時に業務が滞ってしまった
- 能力に見合った作業に配置されていない
▼具体的な3Mの例
ムリ:能力以上の仕事を課せられて、心身の疲労が蓄積し、離職につながった
ムダ:適性が低い仕事に配置された結果、作業完了に多くの時間がかかった
ムラ:経験が豊富な社員と浅い社員に同じ量の作業が割り当てられ、チームとしてのパフォーマンスが低下している
- 形式的な業務が優先されすぎている
▼具体的な3Mの例
ムリ:形式的な書類作成に多くの時間を費やさなければならず、本来注力すべき主業務に十分な時間を割けない
ムダ:過去の慣例や形式にとらわれ、本来は効率的に行える作業を非効率な手順で行っている
ムラ:部署によってルールやフォーマットが異なるため、担当者によって作業量が偏ったり、品質に差が生じたりしている
- 人材育成が計画的に行われていない
▼具体的な3Mの例
ムリ:十分な能力や経験を積んでいない社員が、専門知識を求められる仕事に配置されており作業が進められない
ムダ:必要に応じて必要なスキルや知識を習得できる機会がないと、社員は本来のポテンシャルを発揮できず、非効率な作業を余儀なくされる
ムラ:在籍経験の長い社員は短時間で作業をこなせる一方、それ以外のメンバーは作業に時間がかかり、品質も安定しない
このように、組織の体制や業務の進め方が最適化されてないと3Mが発生してしまいます。では次に、3Mを発生させる「心理的な原因」について見ていきましょう。
心理的な原因
いわゆる「社風」「企業体質」といったものが影響し、3Mを生んでいるケースです。具体的には、以下4つの心理的要素が3M発生の引き金となっています。
- 現状維持バイアスによって3Mが発生・継続している
現状維持バイアスとは「無意識に変化を避け、現状維持を求める心理傾向」のことです。この現状維持バイアスが強まると、3Mが発生していることを認識していても、改善の行動を起こさなくなってしまいます。
- アンカリング効果によって3Mが発生・継続している
アンカリング効果とは「先に与えられた情報が、後の判断に大きな影響を与える現象」のことです。アンカリング効果が強く作用すると、例えば「最新のツールを導入した方が業務効率を高められるものの、既存のツール導入時のよい印象が根強く残り、刷新がなかなか進まない」といった非効率が生じてしまいます。
- 確証バイアスによって3Mが発生・継続している
確証バイアスとは「自分の考えを支持する情報ばかりを集めてしまう心理傾向」のことです。現状を肯定する情報ばかりを集め、問題を過小評価してしまうため、改善が進みにくくなってしまいます。また、現状維持バイアスと相まって変化への抵抗感が強まると、3Mの改善がさらに進まなくなります。
- 過剰な楽観主義によって3Mが発生・継続している
問題の深刻さを過小評価し、放置してしまうケースです。3Mが発生していても「大丈夫だろう」と楽観的に考えてしまい、具体的な対策を講じないまま問題が深刻化してしまいます。
このように考えが凝り固まったり、客観的な視点が欠けたりすることも、3M発生の原因になるのです。
外部環境による原因
最後に紹介するのが「外部環境による原因」です。
自社を取り巻く環境や社会の変化などによって、3Mが発生するケースを指します。細かく見ると、以下3つのことが3Mを発生させています。
- 市場環境の変化
- 技術の変化
- 法制度の変化
具体的には「市場の変化によって、従来のやり方が通用しなくなってしまった(ムリ)」、「技術革新に対応できず古いツールを使い続けている(ムダ)」、「法制度の変化によって有資格者による作業しか認められなくなってしまったため、作業がない人員が生まれてしまった(ムラ)」といった例が挙げられます。
なお、このケースについては、企業側でコントロールできないため解決が難しいこともあります。そのため、外部環境の原因が生じた際には、発生直後にどう動くかが肝心です。
では続いて、これらの原因に沿った「業務効率化の方法」を解説します。
業務効率化の方法
3Mが発生・持続してしまうのは「組織体制・業務習慣による原因」「心理的な原因」「外部環境の原因」によるものだとわかりました。裏を返せば、これらの原因を改善できれば業務効率化は実現できます。
それでは、原因ごとに解決策を見ていきましょう。
「組織体制・業務習慣による原因」の解決策
まず、「組織体制・業務習慣による原因」の解決方法です。
大きく以下4つの方法が挙げられます。
- メンバー間のコミュニケーションを促進させる
- メンバーの能力を把握し、それに見合った仕事に配置する
- 形式的な業務を削減する
- 人材育成を継続的に実施する
【解決策1】メンバー間のコミュニケーションを促進させる
解決策のひとつ目は「メンバー間のコミュニケーションを促進させること」です。
コミュニケーションが促進されると、メンバー各人の状況が把握できるようになり、重複作業や認識の齟齬が減ります。その結果3Mが生じにくくなるのです。
また、コミュニケーションを通じてメンバー間の関係性が深まり、3Mを改善する際に、関係者の理解と協力を得やすくなります。コミュニケーションを促進させるための、具体的な施策は以下のとおりです。
- 朝礼、週次・月次報告、部門間交流など、定期的な情報共有の場を設ける
- チャットや社内SNSを導入するなど、情報共有のためのツールを導入する
- 対話力や積極性を向上させるコミュニケーション研修を受ける
- アンケートを実施したり、意見箱を設置したりする
ちなみに、アンケートや意見箱は無記名で行うのもオススメです。匿名性にすることで率直な意見が言いやすくなり、潜在的な課題が発見しやすくなります。
【解決策2】メンバーの能力を把握し、それに見合った仕事に配置する
メンバーの能力(スキル)を把握し、それらを最大限活かせる仕事に配置することも、3Mを無くす有効な方法です。能力に見合った仕事ができると、業務速度や品質が向上し、3Mが生じにくくなります。
対して、能力に見合っていない仕事(不得意な仕事)に取り組むと、過度に時間がかかったり、質が低下したりと3Mが生じてしまいます。そのため、以下のような方法でメンバーの能力を考慮し、適切な業務を割り当てることが重要です。
- 定期的にスキルチェックや面談を行い、メンバーの得意・不得意なことを把握する
- ジョブローテーションを行い、業務ごとのパフォーマンス(質や速度)を確かめ、適性を発見する
- メンバー同士の交流を促進し、適性を発見しやすい素地をつくる
【解決策3】形式的な業務を削減する
業務の中には、生産的ではないもの・慣習として仕方なく続けているものがあるでしょう。しかし、そうした業務はそれ自体が「ムダ」なものです。そのため、生産性のない形式的な業務は削減しましょう。形式的な業務の削減に効果的な施策は以下のとおりです。
- 既存の業務プロセスを洗い出し、目的・必要性・時間・コストの観点から議論を行い、不要と判断したものを廃止する
- 古くなったルールやマニュアルを見直し、必要に応じて改訂・廃止する
- ツールを導入して、形式的な業務を自動化・効率化する
ちなみに、既存の業務プロセスを洗い出す際には図解化するのもオススメです。図解化することで業務プロセスの全体像が俯瞰でき、どの業務を削減するかの議論がしやすくなります。
▼図解化の例
【解決策4】人材育成を継続的に実施する
人材育成を行い、なおかつ計画的に継続していくことも3M解消には欠かせません。
例えば、研修を通じて業務遂行能力や作業速度を高められれば、業務負荷は軽減できます。また全社的に同じ研修を受け、組織全体で共通のスキルをもてるようになれば、メンバーの業務遂行能力が均一化され、業務のムラが減少します。
なお、近年はビジネスモデルの変化に応じてスキルを習得する「リスキリング」も注目されています。以下の記事ではリスキリングのメリットや導入時のポイントをわかりやすく解説していますので、あわせてご確認ください。
「心理的な原因」の解決策
心理的な原因の解決策は「客観視すること」「仕組み化すること」の2点に集約されます。
それでは原因ごとに解決策を紹介します。
- 他者の意見を取り入れて現状維持バイアスを防ぐ
- 客観的なデータを参考にして、アンカリング効果を防ぐ
- 客観的かつ批判的な意見を意図的に集め、確証バイアスを防ぐ
- 外部研修を取り入れて、過剰な楽観主義を防ぐ
【解決策1】他者の意見を取り入れて現状維持バイアスを防ぐ
現状維持バイアスとは、無意識に変化を避け、現状維持を求める心理傾向のことでした。
現状維持バイアスを防ぐためには、課題に目を向けて危機意識をもつ工夫が必要です。また、実行に移しやすくする仕組みも欠かせません。具体的な解決策は以下のとおりです。
- 業務プロセスや組織体制を見直す機会を定期的に設定する
- 競合企業と比較分析を行い、自社の弱みに気付ける機会を定期的に設定する
- 新たなアイデアを提案・実行した人を評価するなど、インセンティブの設計を行う
【解決策2】客観的なデータを参考にして、アンカリング効果を防ぐ
はじめに提示された情報が基準点(アンカー)になり、後の評価・判断に影響を及ぼす「アンカリング効果」。この効果を解消するためには、印象だけで意思決定をするのではなく、データや意見を参考にする方法が有効です。具体的な解決策は以下のとおりです。
- 客観的なデータに基づき議論し、実行する
- 異なる部門や立場から意見を集めたり、外部の人材に意見を求めたりする
- 新たなアイデアを提案・実行した人を評価するなど、インセンティブの設計を行う
【解決策3】客観的かつ批判的な意見を意図的に集め、確証バイアスを防ぐ
確証バイアスとは、自身の意見を肯定するために都合のよい情報ばかりを集める傾向のことでした。確証バイアスを防ぐためには、批判的な意見を受け入れる仕組みづくりが必要です。具体策は以下のとおりです。
- 批判的な情報や対立する意見を、意図的に探すことをルール化する
- 客観的なデータに基づき議論し、実行する
- 利害関係のない第三者、あるいは専門家に意見をもらう
【解決策4】外部研修を取り入れて、過剰な楽観主義を防ぐ
最後に、過剰な楽観主義に陥らない方法を紹介します。具体策は以下のとおりです。
- リスク管理に関する外部研修などを実施する
- 他社情報に触れられる懇親会や公開セミナーに出席する
- 中期経営計画を作成・発表し、中長期のリスクに気付く機会をつくる
このように、過剰な楽観主義に陥らないためには、外部との情報交流を通じて、多様な視点を得る仕組みづくりが必要です。また、事業リスクを定期的に評価し続ける機会を取り入れると、自社を客観視する機会が増え、過剰な楽観主義に陥りにくくなります。
これらの具体策を実施することで、心理的な原因が解決され、3Mも解消されます。
なお、先ほど説明したように心理的な要因は「社風」「企業体質」といえるものです。従って、そもそも一朝一夕に解消できる課題ではないことも押さえておきましょう。長期にわたってこれらの解決策を実施し、根気よく続けることが重要です。
それでは、最後に「外部環境による原因」への解決策を確認していきましょう。
「外部環境による原因」の解決策
「外部環境による原因」の解決策は大きく以下の3つです。
- 市場環境をまめに観察する
- 新しい技術に積極的に触れる・取り入れる
- 法制度の変更にすぐ対応できる体制を整えておく
それぞれ詳しく説明します。
【解決策1】市場環境をまめに観察する
「市場の変化によって従来のやり方が通用しなくなってしまった」という事態に陥らないように、普段から市場の動向を観察しましょう。集めた情報にもとづき、様々な可能性を考慮しておくことが大切です。
また、業界のニュースやレポートを収集・保存したり、セミナーや展示会で入手した情報をまとめたりと、集めた情報の整理整頓もしておきましょう。なお、集めた情報をファイリングしたり、検索してすぐに見つけたりするのには、PDFを使った管理がオススメです。Acrobat Proを使えば、PDFの整理整頓や検索がカンタンに行えます。記事の後半ではAcrobat Proの特長を詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。
【解決策2】新しい技術に積極的に触れる・取り入れる
効率的な新技術に対応せず、非効率なやり方を続けていると業務効率は低下します。仮に当社比で見た場合の業務効率は低下していなかったとしても、新技術を導入した競合他社と比較すると、相対的に業務効率が落ちているケースもあります。
こうした状況に陥らないためにも、新技術には積極的に触れ、効果が出たのであれば取り入れることが重要です。また、新技術の導入後には社内研修や勉強会などを開き、実務担当者が高いパフォーマンスを発揮できるようサポートすることも大事です。
【解決策3】法制度の変更にすぐ対応できる体制を整えておく
法制度の変更によって業務プロセスが変わり、3Mが発生することがあります。例えば、以下のようなケースが挙げられます。
▼法制度の変更によって業務プロセスが変わった例
- 電子帳簿保存法の法改正によって、電子取引でのデジタル保存が義務化された
- 義務化にともない、電子帳簿保存法に対応したシステムに刷新した
- その結果、取引内容の記録や書類のアップロードなどの業務プロセスが変わった
- 業務プロセスの変更に馴染めないメンバー、ITシステムに馴染めないメンバーが出てきてしまい、業務分担にムラが生じてしまった
(※なお、Acrobat Proは改正電子帳簿保存法にも対応しています。詳しくは電子帳簿保存法をわかりやすく解説しているページをご覧ください)
ただし、こうした法制度の変更に対して、事前に対策するのは至難の業です。そのため、実際に法制度が変更された際、すぐに会議を開いて方針を定めたり、専門家によるコンサルティングを受けたりと、スピーディかつ柔軟性をもって対応することが重要になります。
ここまで、3Mの原因ごとに解決策を解説してきました。
これらの解決策を実行していけば、業務効率化は着実に実現できます。ただし、業務効率化を進めるにあたっては適切な順序が存在します。方法自体が優れていても、進め方に難があれば3Mは再び発生してしまいます。つまり、業務効率化は進め方も効率的でなければならないのです。
次章では、業務効率化の適切な進め方を解説します。
業務効率化の進め方
以下の手順で業務効率化を進めると、時間やリソースの浪費を避けられます。手順は以下の5段階です。
- 現状把握
- 課題の分析
- 改善策の検討
- 改善策の実施
- 改善の定着
では、順に確認していきましょう。
【手順1】現状把握
まずは現状の業務内容、そして課題(3M)の把握から始めます。
顕在化している課題はすぐに把握できますが、潜在的な課題は表面化するまで気付かれにくいものです。しかし、こうした課題は業務内容を細かく洗い出す過程で見つかります。
そのため、まずは業務内容を精緻に把握するところから始めましょう。業務内容を把握する方法として、主要なものを以下に挙げてみました。
- 現状の業務内容や数値目標などを把握し、まとめる
- 業務フロー図やマニュアルなどの資料を確認したり、作成したりする
- 各作業が発生する頻度、作業にかかる時間、担当者などを記録する
また、このフェーズでは「多方面から事実を把握すること」「現状の事実やデータを洗い出して整理すること」を意識し、必ず現場の声も聞きましょう。そして業務内容を把握をした後には、課題についても把握していきます。精緻に把握した業務内容を見て、どんな部分に3Mが発生しているかチェックしましょう。
なお、3Mを探し出すのが難しい場合や、そもそも3Mが上手く見つけられない場合には、以下の問いかけをしてみてください。問いかけを通じて、3Mが見つけられるはずです。
▼3Mの発見につながる問いかけ
この作業は負担が大きすぎませんか?
必要以上に高いスキルや経験が求められていませんか?
長時間労働や休日出勤を伴う作業はありませんか?
不必要な手順や作業はありませんか?
重複作業は発生していませんか?
費やした時間や金額に、リターンは見合っていますか?
業務量や作業負荷は偏っていませんか?
品質や成果は安定していますか?
納期やコストは一定していますか?
【手順2】課題の分析
次に、手順1で見つけた3Mの因果関係を分析します。
例えば「ムリ」の因果関係を探る場合には、作業量や作業時間がかかりすぎている部分はどこなのか、なぜ作業量や作業時間が膨大になってしまっているのかといった原因を明らかにします。
先ほどご紹介した問いかけをしたり、様々な角度から情報を整理したりすることで、把握した課題の因果関係を明らかにしましょう。また、あわせて3Mによって発生している影響を、定量的に確認しておきましょう。
例えば「絶対達成できない量の営業ノルマ」という「ムリ」な課題があった場合、担当者の残業時間・残業代はどれだけになっているか、休日出勤の数や時間はどれほどか、同じ職種における過去一年間の離職者数は何名かといったことなどもまとめておきます。
このように、個別の課題がどれほど影響力をもっているかを分析しておくと、改善する際に、どの課題から対応すべきか、優先順位を付けやすくなります。
【手順3】改善策の検討
続いて、改善策を検討していきます。
例えば「会議が多すぎるムダ」に関する改善策であれば、以下のような施策が挙げられます。
- 会議に時間制限を設ける(1回あたり30分までにする)
- 社内会議に頻度制限を設ける(週にX回までにする)
- 承認・決裁を伴わない意思決定に関しては、基本的に会議化しない
こうした改善策の中から、どの方法を取るのが最適か、あるいは同時にすべてやるべきかといったことを議論してみましょう。また今回は、よくあるケースごとに、明日からすぐに実践できる改善策をまとめてみました。これらを参考に改善策を比較検討してみてください。
- 会議を効率化する改善策
- 会議の時間や頻度を制限する(1回30分まで、週5回までにするなど)
- 議事録の作成・共有を徹底する
- 定期的な会議が本当に必要かどうかを見直す
- 採用業務を効率化する改善策
- 面接をオンライン化する
- 選考基準を明確にし、どのメンバーでも判断できるように規格化する
- 新入社員に必要な研修や情報提供を効率的に行えるよう、オンボーディングプロセスをマニュアル化する
- 通常業務を効率化する改善策
- 業務マニュアル・フローチャートを作成する
- 不要な業務、価値が薄い業務があれば無くす
- 各人のスキルを把握し、適性に沿って業務担当を再配置する
- ツール利用を効率化する改善策
- 連絡手段を変更する(メールからチャットツールへの移行など)
- タスク管理ツールの導入と活用を徹底する
- システムを導入し、自動化できる作業を機械に置き換える
- 効率的な業務環境をつくるための改善策
- 業務効率化への意識向上を目的とした研修を行う
- 職場環境・備品を整備する
- 社内で使う書式を統一する
なお、改善策を比較・検討する際には以下のポイントを考慮しましょう。
- コスト
- 時間
- 実現可能性
なぜこれらの要素を考慮するかというと、コストや時間を意識せずに改善策を決めると、「やる価値の薄い改善策(=ムダ)」を優先的に進めてしまったり、「途方もない時間が必要な改善策(=ムリ)」を選んでしまったりする恐れがあるためです。
また、理論上優れた施策があったとしても、実務担当者や社内の環境にフィットしていなければ業務効率化は期待できません。
例えば、業務効率を飛躍的に向上させてくれるツールがあったとしても、担当者が使いこなせないのであれば改善は叶わないでしょう。そのため、「効果が出る改善策であるか否かの前に、実際に運用できるか否か」という観点で比較検討しましょう。
【手順4】改善策の実施
続いて、比較検討を経て、決定した解決策を実施していきます。
なお、実施する際には「小さな改善から始めること」「改善効果を測定すること」を心掛けましょう。それぞれを意識することで、以下のようなメリットがあります。
▼小さな改善から始めるメリット
- 取り組む際の抵抗感が減り、後回しになりにくくなる
- 失敗した際のリスクが小さくなる
- 小さな改善で得た教訓を積み上げると、大きな改善にも役立つ
- 効果検証をしやすくなる
- 達成や成功がしやすく、業務効率化のモチベーションが高まる
▼効果を測定するメリット
- 効果の高い施策を継続・強化し、効果の低い施策を改善・廃止する判断に活かせる
- 施策の効果が数値で示されることで、達成感を高め、モチベーション向上につながる
- 施策の効果を数値やデータで示せるようになると、理解と協力を得やすくなる
これらのメリットは大きいため、「小さな改善から始めること」「改善効果を測定すること」を徹底してみてください。なお、改善施策によって効果が上がったとしても、現状を精緻に把握できていないと改善幅がわかりません。そのためにも、手順1でしっかりと現状把握をすることが大事になります。
【手順5】改善の定着
最後は、ここまで実施した改善策を定着させていきます。
業務効率化は一度きりで終わるものではなく、継続的に続けることが重要です。そのつど問題を見つけ、対処していくことで「3Mが無くなり、より少ない時間・コスト・労力で同じ成果を達成する」というゴールに近づけます。
しかし、改善を定着させるのはカンタンなことではありません。そこで、ここでは改善策を定着させるコツを3つ紹介します。
- 関係者全員を巻き込む
関係者全員を巻き込むと、改善のフローが「当たり前の風土」として定着しやすくなります。また、仮に誰かが改善のフローを止めてしまったとしても、他の誰かが続けているため、組織全体として改善の歩みが止まりにくくなります。
- 小さな成功体験を積み重ねる
小さな成功体験を通じて、関係者が業務効率化の重要性を実感してくれるようになります。また成功した達成感が、次なる改善への意欲を生み、改善のアクションが持続しやすくなります。
- 改善活動を評価する
業務効率化を実施した回数や、改善のインパクトを人事評価などに組み込むのも、定着に効果的な方法です。業務効率化を実施した人にインセンティブが生じることで、続けるメリットが各人に生まれて持続しやすくなり、定着につながります。
この3つのコツを意識して、業務効率化の習慣を付けましょう。
ここまで業務効率化の方法や進め方を解説してきました。
紹介した方法を押さえれば業務効率化は実現できますが、初めのうちは課題の見極めが上手くいかなかったり、実行に時間がかかってしまったりと、思うように進まないことも多いはずです。
そこで、続いては業務効率化が上手くいかないNG例を5つ紹介します。具体的なケースを用いて解説するので、自社の状況と照らし合わせながら、ぜひ参考にしてみてください。
業務効率化が上手く進まないNG例5選と対策
これからご紹介する5つのNG例は、多くの企業で見られる共通の課題です。これらの失敗例を参考にし、適切な対策を講じることで、業務効率化の成功確率を高められます。それでは、業務効率化のNG例を見ていきましょう。
【NG例1】目標設定が曖昧なまま進めてしまっている
目標設定が曖昧なままでは、業務効率化は上手くいきません。例えば「業務効率化を行う」という漠然とした目標だけで改善プロジェクトがスタートし、具体的な目標数値や達成基準を設けていない場合を考えてみましょう。
この場合、具体的にどのような方向で、どの程度の水準を目指しているのかが不明瞭です。そのため、次第にメンバー各人が独自の解釈でアクションを取るようになります。また、具体的な指標がないため進捗状況の評価ができません。そして、プロジェクトが進展しないことで関係者のモチベーションは低下し、やがてプロジェクトは頓挫してしまうのです。
こうした事態を避けるためには、具体的な目標数値や期限を設けましょう。
【NG例2】関係者間の連携が不足しがち
関係者間の連携が不足していると、業務効率化のプロジェクトは上手く進みません。例として、新システムの導入プロジェクトにおいて、開発チームと運用チームの間で連携が取れていない場合を考えてみましょう。
開発チームにて、サービスログイン時のユーザー認証機能の実装をしていたものの、カスタマーサポートチームにはその詳細を伝えていなかったとします。そうなると、ユーザー認証という大規模な変更が行われたにもかかわらず、カスタマーサポートチームはそれを知らないまま通常業務をすることになります。
結果として、運用段階で「これまでは認証がなかったのに、認証なしではログインできなくなってしまった」とユーザーからの問い合わせが急増し、3Mが発生してしまうでしょう。
こうした事態を避けるためには、定期的なミーティングや部門を越えた情報共有の機会を設けることが必要です。
【NG例3】適切でないツールを選定・導入してしまった
適切でないツールを選定・導入し、業務効率化が進まないケースもよくあります。例えば、業務プロセスの自動化を図るために、多機能なツールを導入した場合を考えてみましょう。
そのツールは上手く使いこなせれば改善の効果は見込めるものの、操作方法が複雑で、導入後に現場担当者が使いこなせなかったことが発覚したとします。
こうした場合、多くの時間を費やしてトレーニングを行ったとしても、習熟までのハードルが高く、現場では従来の方法を続ける可能性が高まります。結果、業務効率化は進まず、頓挫してしまうでしょう。
こうした事態を避けるためには、ツール選定時に現場の声をよく聞き、なおかつ実際にツールを試してみることが重要です。ツール導入の際には、契約前のトライアル期間を設けて、運用できるかどうかも考慮しましょう。自社に合ったツールや施策をきちんと検討することが大切です。
【NG例4】メンバーからの抵抗が強すぎる
業務効率化の取り組みが上手く進まない理由のひとつに、メンバーからの抵抗があります。
例えば、現場社員たちが従来のやり方に強いこだわりがあったり、新システムの導入・運用に対して難色を示していたりするケースが考えられます。この状況下で、新しい生産管理システムを導入する場合を考えてみましょう。
新システムの導入を周知したところ、現場社員を中心に「これまでの方法で十分上手くいっている」「新システムの使い方が難しい」といった批判的な声が上がったとします。
このような状況では、新システムの導入が遅れたり、そもそも運用が定着しない可能性があります。
このような事態を避けるためには、メンバーの抵抗を和らげる工夫が必要です。具体的には、導入前に説明会を開いたり、メリットや使い方を丁寧に説明したりする方法が挙げられます。また、新システムを使用したメンバーには手当を付けるといった評価制度の刷新も効果的です。
【NG例5】一回やって終わりになってしまっている
業務効率化の取り組みが一回限りで終わってしまうと、持続的な改善が望めません。例えば、一度だけ業務プロセスの見直しを行い、業務効率化を図ったとします。しかし、導入したツールや方法が次第に現場で使われなくなり、元の非効率なやり方に戻ってしまった場合を考えてみましょう。
このような事態を防ぐためには、定期的な振り返りを仕組み化する方法が効果的です。例えば、週次・月次で振り返りミーティングを実施するといった取り組みです。このように、振り返りの機会を短いスパンで設けることで改善フローの定着が見込めます。
以上が、業務効率化が進まない場合のNG例5選と対策でした。ここまでご紹介したコツを押さえて、効果的な業務効率化を進めてみてください。
とはいえ、多くの企業では日々の業務に追われ、継続的な業務改善に時間を割けない現実があります。特に、どの業界でも発生する書類業務は、手間がかかりがちな業務の代表例です。例えば「請求書や契約書など、書類業務が多すぎて手が空かない」「書類管理が煩雑になりすぎていて、目的の情報を探すだけで一苦労」といった声は多くの現場で聞かれます。
このような書類業務を効率化するために、オススメなのが「Acrobat Pro」です。
Acrobat Proは全世界で使われているPDFツールで、書類の作成・編集・管理作業が大幅に簡略化され、業務効率化に大きく貢献してくれます。それではAcrobat Proを導入するメリットを詳しく紹介します。
Adobe Acrobat Proを使って、文書業務を効率化しよう!
法人版Adobe Acrobatは、ビジネスに特化したPDFツールです。PDFの編集や共有、電子サインに至るまで、PDFに関する便利な機能が一つに集約されており、世界中の企業が業務推進に活用しています。今回は6つの特長をピックアップしてご紹介します。
- PDF上のテキストと画像をサッと編集できる
- ファイル形式を変換できる
- 文書の整理整頓がラクにできる
- 文書を安全に管理できる
- リンクを送信して誰とでも文書を共有できる
- 電子サインの署名・送信ができる
【特長1】PDF上のテキストと画像をサッと編集できる
PDF上のテキストの編集や、テキストの新規追加が可能です。また、画像や図形の追加や差し替え、フリーハンドでの書き込みなどもできます。Acrobat Proを使えば、誤字脱字の修正やロゴ画像の差し替えが、あっという間に終わります。
【特長2】ファイル形式を変換できる
Microsoft Excel・Microsoft Word・Microsoft PowerPoint、そしてPNGやJPEGといったファイル形式と、PDFを相互に変換できます。変換の操作もわずか数クリックだけで済み、状況に応じたファイル形式への変換が可能です。容量が重く、メールでの送付が難しいファイルも、PDFに変換すればスムーズに送信できます。
【特長3】文書の整理整頓がカンタンにできる
Acrobat Proでは、PDFページの並び替えや削除、PDFファイルの結合などもカンタンに行えます。これまで使用した提案資料をひとつにまとめたり、日付順に並べ替えたりすることも可能です。
また、Acrobat Proではキーワードで検索し、目的のファイルを瞬時に見つけることもできます。複数ファイルを横断して検索できるほか、大文字と小文字を区別した検索・完全一致による検索なども可能なため、目的の情報に瞬時にアクセスできます。
【特長4】文書を安全に管理できる
PDFファイルにパスワードを設定し、文書を安全に管理できます。Acrobat Proでは、ファイルを開くためのパスワードと、操作を制限する権限パスワードの2種類の設定が可能です。権限パスワードでは印刷・編集・コピーの制限ができます。また、Acrobat Proには墨消し機能も搭載されています。Acrobat Proの墨消し機能は、PDFファイル内の情報を削除したうえで塗りつぶしを行うため安心です。
【特長5】リンクを送信して誰とでも文書を共有できる
PDFのリンクを共有し、ひとつのファイルを複数人で、同時に確認できます。複数人での共同レビューができるため、印刷して紙での回覧も不要です。また、レビュー状況を視覚的に把握できるため、進捗管理にも役立ちます。なお、Acrobat ProはPC以外にモバイル端末でも使えるため、いつでもどこでもコメントやレビューが行えます。
【特長6】電子サインの署名・送信ができる
さらに、Acrobat Proでは電子署名や電子署名の依頼も可能です。署名を依頼した人には通知メールが届き、オンライン上で署名が行えます。
なお、署名にはテキスト入力・自筆・画像などが利用でき、ハンコの印影をあらかじめ画像として用意しておけば、紙と同じような感覚で承認印を押すことも可能です。また、すべての承認が完了すると、関係者全員に確認のメールが届きます。各人の作業状況をリアルタイムで把握できるため、進捗確認の手間もかかりません。
今回は業務効率化をテーマに、様々なアイデアや進め方を解説してきました。ご紹介した内容を実行できれば、業務効率化が進むはずです。一方で、解説した内容をそのまま踏襲・実行するのではなく、これらのノウハウや事例をどのようにして自社に取り入れるかを見極めることが、業務効率化の鍵となります。
また、効率化のための施策やツールは多岐にわたるため、自社の状況に合わせて最適なものを選びましょう。
そして様々なツールがある中でも、Acrobat Proにはビジネスシーンに役立つ機能が満載で、誰でもカンタンに使えます。業務効率化のためのツールとして、全世界で使われている「Acrobat Pro」をぜひお試しください。
(編集:ウェブライダー)
https://milo.adobe.com/libs/img/mnemonics/svg/acrobat-pro-64.svg
ぜひAdobe Acrobatオンラインツールをお試しください
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