Adobe Systems Incorporated(Nasdaq:ADBE、本社:米国カリフォルニア州サンノゼ、以下アドビ システムズ社)は2009年10月23日、Omniture, Inc.(Nasdaq:OMTR)の全発行済み株式の公開買付けを完了したと発表しました。取引は現金で行われ、買付け価格は1株あたり21.50ドルでした。
アドビ システムズ社によるOmnitureの買収は、完全希釈化後の株主価値ベースで約18億ドル規模の取引となり、2009年10月23日に完了しました。
戦略とビジネスの統合
Omnitureの業務内容を教えてください。
Omnitureは、Web解析のリーダー企業です。同社のOmniture Online Marketing Suite™は、Webサイトにおけるコンバージョンと広告費の最適化を実現する先進のソリューションです。このソリューションは、Webサイトにおける訪問者の取得、コンバージョン、オンライン解析、マルチチャネル解析用の各種アプリケーションがオープンなビジネス解析プラットフォーム上に構築された包括的なポートフォリオです。
アドビ システムズ社によるOmnitureの買収理由を教えてください。
アドビ システムズ社の使命は、人とアイディア、人と情報の関わり方に変革をもたらすことです。当社のコンテンツ作成ツール、Adobe® Flash® PlayerならびにAdobe Acrobat® Readerなどのユビキタスクライアントと、OmnitureのWeb解析・計測・最適化テクノロジーを組み合わせることにより、すべてのデジタルコンテンツ、プラットフォーム、デバイスを通じて、魅力的な体験やEコマースの未来を変革することのできるソリューションを提供することが可能となります。
当社は、コンテンツ作成からWeb上のそれらのコンテンツの最適化による循環型のソリューションを完成させることで、顧客価値を提供します。これはアドビ システムズ社自身のビジネスモデルにとっても有益であり、さらなるビジネスの成長を見込んでいます。今回の買収のメリットは以下の通りです。
- グローバルな解析・最適化の市場でのアドビ システムズ社の対象市場と成長の可能性が大幅に 拡大し、急成長市場であるインターネット広告、Eコマース、デジタルメディアを対象としたアドビ システムズ社の提供ソリューションの幅が広がります。
- アドビ システムズ社によるエンタープライズ向け基幹業務ソリューションの製品群がさらに拡大します。Omnitureの機能が組み込まれることで、アドビ システムズ社の製品群はさらに強力なものとなり、広告主、パブリッシャー、小売店、オンラインマーケッター、最高マーケティング責任者をはじめ、ユーザーへの訴求能力がこれまで以上に高まります。
- アドビ システムズ社のビジネスがさらに多様化する一方で、四半期あたり1兆を超えるトランザクションを計測できる、拡張性の高いSaaS(Software as a Service)型のプラットフォーム、広範なパートナーエコシステム、契約自動更新型の収益モデルを加えることになります。
- Omnitureにとっては、新たな市場や地域への進出を推し進めることができます。Omnitureは現在、北米、北欧、アジアの一部地域で強力な基盤を持ちますが、アドビ システムズ社の持つブランド力とグローバルな事業規模により、これら以外の地域にも進出できるようになります。官公庁市場でのアドビ システムズ社の導入実績を生かし、Omnitureのソリューションを訴求できると考えています。
- メディア&エンターテイメント、代理店、小売、製造、金融サービスなど、さまざまな業界で構成される両社の顧客基盤を対象に、アドビ システムズ社とOmnitureによるソリューションのクロスセルが実現します。
今回の買収による顧客側のメリットを教えてください。
消費者のWebの利用時間の増加にともなって、コンテンツ配信ならびに所有者、メディア企業、エンタープライズなど、アドビ システムズ社のお客様は引き続き、従来のメディア形式からWebへと移行しています。消費者のオンライン体験の計測と最適化、そして最終的には収益化を実現することへの圧力は、今後さらに高まります。アドビ システムズ社とOmnitureの組み合わせによって、コンテンツ作成からWeb上のそれらのコンテンツの最適化による循環型のソリューションを完成させることで、お客様にとっては、Webへの移行が容易なものとなります。
- Adobe® Creative Suite®とAdobe Flash® Platformは、お客様による表現力豊かなインターネット体験、コンテンツ、アプリケーションの作成を支援します。
- Omnitureが加わることで、お客様は、Web体験、コンテンツ、アプリケーションの価値を計測し、最適化することができます。
その結果、お客様は、より魅力的で関連性のある体験、コンテンツ、アプリケーションを提供し、最終的には、Webとデジタルメディアの投資に対するROI(投資収益率)を向上できます。
Omnitureはアドビ システムズ社にどのような形で統合されるのですか。
Omnitureは、アドビ システムズ社内の新たなビジネスユニットとして運営されます。これは、「Omnitureビジネスユニット」と呼ばれ、SaaSプラットフォームと、1) 広告費の最適化、2) 訪問者によるコンバージョンの最適化を実現する統合ビジネス解析アプリケーションセットのOmniture Online Marketing Suiteの提供・発展に取り組みます。
アドビ システムズ社の他のビジネスユニットは、以下の通りです。
- クリエイティブソリューションビジネスユニット ― 各種ソフトウェア(Adobe Creative Suite®、Adobe Photoshop®、Photoshop® Elements、Adobe InDesign®、Adobe Illustrator®、Adobe Dreamweaver®、Adobe Flash® Professional、Adobe Premiere® Pro、Adobe After Effects®)やホステッドサービス(Photoshop.com、Scene7®)などの業界をリードするブランドを通じ、クリエイティブプロフェッショナルからハイエンド志向の消費者まで、幅広いお客様を対象に、ソリューションを提供します。
- ビジネスプロダクティビティビジネスユニット ― Adobe LiveCycle®とAdobe Acrobat®、Acrobat® Connect™ Pro、Acrobat.comなどの製品を通じ、エンタープライズや官公庁向けのソリューションを提供します。
- プラットフォームビジネスユニット ― Webデベロッパーや企業と顧客との関わり方を大幅に向上させる製品やソリューションの開発を実現するAdobe Flash Platformの発展に取り組みます。Adobe Flash Platformには、Adobe Flash® Player、Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime)®、Adobe Flex®、Adobe Flash Builder™、Adobe ColdFusion®などの、クライアントテクノロジーと開発者向け技術が含まれます。
- プリント&クラシックパブリッシングソリューションビジネスユニット ― テクニカルパブリッシング、ビジネスパブリッシングから、アドビ システムズ社の活字(フォント)および印刷技術のOEM事業まで、幅広いニーズを対象に、市場機会に応える製品とサービスを提供します。
製品統合
Omniture製品の提供を中止する予定はありますか。
Omnitureの現行製品のサポートや開発を中止する予定はありません。むしろ、Omnitureは今後、 さらなるリソースを活用することで、既存製品の機能性を高めつつ、新たな技術を開発・取得することになります。
アドビ システムズ社とOmnitureの統合に関する戦略上の重要ポイントを教えてください。
買収完了にともない、アドビ システムズ社は、現在および将来のWebを対象に、包括的で比類のないソリューションを提供するため、製品の統合作業に着手します。統合作業の内容は以下の通りです。
- Omnitureの解析ソリューションや最適化ソリューションとFlash Platformを連携させることで、Flash PlayerとAdobe AIRで動作する魅力的なコンテンツやアプリケーションの計測と容易な最適化を実現するほか、使い勝手に優れた解析コンポーネントを採用し、Flexフレームワークを拡大します。
- OmnitureソリューションとCreative Suiteツール(Adobe Dreamweaver、Adobe Premiere Pro等)の統合パッケージを開発します。これによって、デザイナーやデベロッパーは、ユーザー体験やコンテンツの解析と最適化を行うことができます。
- Omnitureのビデオ解析機能と最適化機能を、(現在、Web上のビデオの75%以上に使用されている)Flash Platformの互換のビデオに対応させます。このほか、顧客からの要件に基づき、より効果的なターゲット化、ユーザーへの訴求、収益化への対応に向けた、包括的なビデオ機能を開発するための投資を行います。
- Omnitureソリューションの統合により、スマートフォンやインターネット対応TVなど、さまざまなデバイスを通じ、体験と利用コンテンツの解析と最適化を実現します。
- LiveCycleやScene7など、他の主要なアドビ システムズ社のソリューションとの統合パッケージを開発します。これらの製品に分析機能と最適化機能を搭載することで、お客様にとっては、より包括的なソリューションが実現します。
アドビ システムズ社とOmnitureの製品統合によって実現する、顧客の使用事例にはどのようなものがありますか。
- デザイナー、開発者 ―
開発プロセスの初期段階から計測機能と最適化機能を採用したアプリケーションを開発することができます。これによって、ユーザー中心のアプリケーション設計に向けた取り組みが大きく発展し、アプリケーションを短期間で改良して、使用状況、満足度、収益力を向上させることができます。 - コンテンツ制作者、保有者 ―
「保有・運営する」資産、急速に流通する資産、ソーシャルメディア資産を対象に、あらゆるインターネット対応デバイスで、コンテンツの利用状況を計測し、ターゲット化とWeb体験の最適化を行えるようになります。これにより在庫価値の向上やコンテンツの有効活用につながります。 - 広告主 ―
クリエイティブワークフローの本来の要素として、あらゆる形式の広告に対し、容易にタグ付けを行うことができるため、メディアの種類やオンラインチャネル、デバイスの種類を問わず、ユーザーへの訴求力と性能を計測できます。これによって、より関連性の高いパーソナル化された体験が実現し、訪問者への訴求と滞在時間を向上できます。 - Eコマース、マーケティングプロフェッショナル ―
開発プロセスの本来の要素として、製品情報やオンサイトの販促コンテンツに対し、容易にタグ付けを行うことができます。これらの企業は、サイトの運営者が利用可能なユーザー行動などの情報に基づき、特定層のユーザーはもとより、たった1人のユーザーに対しても、カスタム化を実現しつつ、ランディングページの提供、オンサイトの販促活動、製品のマーチャンダイジング、製品の推奨、ショッピングカートの構成を最適化できます。
アドビ製品との統合以外に、Omnitureにはどのような製品戦略がありますか。
- Omniture Online Marketing Suiteはすでに、主流となっているWeb規格とコンテンツ形式のすべてを対象に、クラス最高のソリューションを提供しているため、当社は今後も、充実したAPIセットによるオープンなプラットフォームを維持し、お客様やパートナーのアプリケーションとの容易な連携を実現しつつ、HTML、SWF、FLV、PDFなどの主流の規格や形式への投資を継続していきます。
- 当社は今後も、Omniture Online Marketing Suiteの既存アプリケーションすべての開発と統合への投資を継続することで、スイートの開発におけるアドビ システムズ社の専門知識を活用していきます。
- Omniture Online Marketing Suiteの価値を拡大し、オンラインマーケッターを対象とする新たなオンラインマーケティングアプリケーションの開発・取得に向け、さらなる投資を行います。
- Omnitureのお客様の事業拡大に伴う信頼性や拡張性に関する要件に応えるため、Omniture Online Marketing SuiteプラットフォームとSaaSインフラストラクチャにも投資を行います。
Omnitureの買収とOmniture関連製品の統合によって、新バージョンのCreative Suite 5発売時期への影響はありますか。
Creative Suiteの新バージョンの提供は2010年を予定していますが、Omnitureの買収を原因とする提供時期の延期は予定していません。両社の製品群を通じてお客様に短期、長期にわたってさらなる価値と機能をお届けできるでしょう。
製品のリリースサイクル全体については、優先順位の高い製品統合を実現するための予備計画 が導入されているものの、さらなる詳細情報やスケジュールについては現在公開しておりません。
企業経営
アドビ システムズ社に新設されるOmnitureビジネスユニットの責任者を教えてください。
Omnitureの旧CEOであるジョシュ ジェイムズ(Josh James)は、新ビジネスユニットのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャとしてアドビ システムズ社に参加、社長兼CEOのシャンタヌ ナラヤン(Shantanu Narayen)の直属となります。
Omnitureの企業ブランドはどのようにする予定ですか。
買収完了により、Omnitureは、「アドビ システムズ社の子会社であるOmniture」と称されます。これは暫定的なブランド戦略です。今後、Omnitureの企業ブランドは終了し、同社はアドビ システムズ社の企業ブランドの一部になります。当社は今後数カ月間のうちに、Omniture製品の最適なネーミング体系を決定する予定です。
その他のOmnitureの旧経営陣は、アドビ システムズ社に参加しますか。
アドビ システムズ社に参加するOmnitureの経営陣は以下の通りです。
- クリス ハリントン(Chris Harrington) ― Omnitureセールス&サービス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ
- ブレット エラー(Brett Error) ― 製品&テクノロジー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ
- ジョン メラー (John Mellor) ― ビジネス開発担当バイスプレジデント
Omnitureは、アドビ システムズ社の取締役会に参加しますか。
参加しません。
Omnitureの買収に伴う人員削減はありましたか。
Omnitureの約9%の人員が削減されました。
どのような役職が影響を受けていますか。
人員削減の対象となった役職の大半は、一般管理部門です。
買収によって、アドビ システムズ社の従業員の削減は行われるでしょうか。
Omnitureのアドビ システムズ社への統合作業を開始し、2010年会計年度の業務計画を決定した後、当社は例年通り、自社全体のリソースと構造が今後の戦略と売上予測に即したものとなるよう、これらの見直しを行います。
買収前のOmnitureの従業員数を教えてください。
世界全体で約1,200人でした。
買収完了による、アドビ システムズ社の全世界の従業員数を教えてください。
2009年第3四半期末日(2009年9月15日)のアドビ システムズ社の全世界の従業員数は7,564人でした。2009年12月15日に第4四半期の業績発表を行う際には、最新の従業員数を公開します。
ユタ州オレムの旧本社施設は存続しますか。
はい。新設のOmnitureビジネスユニットは、ユタ州オレムにあるOmnitureの旧本社施設を拠点とします。
一部の都市や地域では、アドビ システムズ社とOmnitureの両方が事業を行っています。これらの施設は閉鎖されるのでしょうか。
統合プロセスの過程を通じ、雇用計画とお客様の立地に基づき、施設の統合が理にかなったものであるかを評価します。現時点(2009年10月26日)で発表できることはございません。
顧客およびパートナーのサポート
Omnitureによる既存の顧客サポート契約は引き続き遵守されるのでしょうか。
アドビ システムズ社は、既存のお客様すべてに対し、Omnitureとの既存の契約の条件を遵守する意向です。同時に、今回の買収による、Omnitureのサポートポリシーや合意に基づくサービスレベルへの変更はありません。テクニカルサポートについては、現行のサポート期間が終了するまでの間、Omnitureのサービス契約の条件に引き続き従います。アドビ システムズ社のビジネスポリシーによるサポート契約の変更については、決定次第お客様に速やかにお知らせします。
Omnitureの営業チームに変更があった場合、顧客にはどのような形で知らされるのですか。
Omnitureのお客様には、アドビ システムズ社の営業チームにスムーズに移行していただくよう努めます。営業チームに何らかの変更があった場合、お客様にお知らせします。現在のところ、大幅な変更は予定していません。
Omnitureの顧客は、製品サポートに関して誰に連絡すればよいのですか。
お客様には、今後も既存のサポート窓口をご利用いただくことになります。
取引・財務情報
買収の完了時期を教えてください。
本取引は2009年10月23日に完了しました。
買収条件を教えてください。
Nasdaqで取引されているOmnitureの普通株式は、どのような扱いになるのでしょうか。
これまでNasdaq Global Select Marketで取引されてきたOmnitureの普通株式(証券取引コード:OMTR)は、買収完了に関連し、取引停止となりました。
買収後の新組織の財務目標は、いつ発表されますか。
財務目標に関し、現時点で発表できる追加情報や最新情報はありません。2009年12月15日の業績発表では、アドビ システムズ社の2009年度第4四半期に関し、アドビ システムズ社とOmnitureの連結ベースの業績を発表する予定です。第4四半期の業績発表の一環として、アドビ システムズ社の第4四半期の業績に短期間貢献したOmniture単体の事業についても、これに関連した財務情報を提供する予定です。
アドビ システムズ社の財務報告スケジュールを教えてください。
アドビ システムズ社の2009年会計年度は、2009年11月27日を末日とします。
本FAQは、実際の業績を大幅に異ならせる可能性のあるリスクと不確実性を内包した将来の製品計画および統合に関連した将来的観測を含みます。これらおよびその他のリスクと不確実性についての解説については、当社が証券取引委員会(SEC)に提出した書類をご参照ください。アドビシステムズ社はこれら将来的観測を更新する義務を負うものではありません。