データセンターに関する戦略的環境対策
アドビはオレゴン州のヒルズボロに大規模なデータセンター(OR1)を1つ所有し、運営しています。この場所は、2011年に選択され、2013年に整備されました。この場所が選ばれたのには多くの理由ありますが、アドビに古くから根付いているサステナビリティ文化にオレゴン州ヒルズボロが合致すると判断された背景には、いくつかの要因があります。
- 当時、「エンタープライズゾーン」という税インセンティブが導入されていて、低コストな水力電源の使用率が高く(選択当時の2011年には米国で最高水準)、施設の稼働期間中に100%再生可能エネルギーへ移行できる可能性がありました。このことが、この場所を選ぶ大きな理由となりましたが、それに加えて、オレゴン州の穏やかな気候がエネルギー効率的にも適していることや、安全面でも比較的好条件(つまり、洪水のリスクや年間の温度差が少ない)であること、またワシントン郡の半導体産業のレガシーとして、地域の電力網や通信網に信頼性があることなども考慮されました。
- 他のテクノロジー企業もこのエリアで事業を運営しています(Intel、Genentech、Radisysなど)。これらのパートナーはいずれも再生可能エネルギーの目標を設定しているので、電力調達の面で連携できる可能性がより期待できます。当時は自社調達が主に考えられていましたが、現在ではグリーンタリフや、現地の公益事業者であるPortland General Electricのその他の商品にも可能性があります。
- OR1は、将来的に太陽光発電設備を設置できるように設計されました。アドビでは現在、データセンターのプロビジョン率が100%に迫りつつあるため、この選択肢を検討しています。データ消費がかつてなく増えており、オンサイト発電の経済的採算性が以前よりも高くなっています。
- この場所が選択された当時は水セキュリティが非常に高く、低下傾向もありませんでした。気候関連のシナリオ分析でも、マテリアルリスクが非常に低いという結果が出ました(渇水が少ない、極端な気温変化が少ない、燃料燃焼率の上昇が起きにくいなど)。
アドビのOR1データセンターは、クラス最高のデータセンターと同じ基準に従って建設されました。またOR1は、主要サイトのサーバールームをこの施設に統合してスケールメリットを達成するための、研究開発およびアプリケーション開発ハブの役割を果たしています。アドビは、データセンターのエネルギー効率分野におけるリーディング企業と連携しながら、最新のテクノロジー(ホット/コールドアイルや熱リユースなど)を施設に導入するとともに、建物内のサーバー、ストレージ、ネットワーキングなどについて、テクノロジーリフレッシュ機器を導入しています。
また、共同設置しているデータセンター(COLO)とも、サステナビリティの取り組みについて緊密に連携しています。気候変動のリスクを最小限に減らし、持続性と回復性に優れたサプライチェーンを構築するために、アドビはCOLOと連携しながらサステナビリティの目標達成に取り組んでいます。アドビが発足メンバーとして加盟しているBSRのFuture of Internet Powerが開始されて以降、アドビはデジタルサプライヤーと積極的に連携しながら、各社の再生可能エネルギー目標の設定や、それらの目標を運営地のグリッドで達成する手段の特定を支援してきました。政策の支持に関する連携や、REプロジェクトにおけるCOLOとの直接的連携を通じてアドビが確信したことは、環境目標を単独で達成しようとする時代は終わったということです。これからは、地域の公益事業者、NGO、同業他社、顧客、およびデジタルサプライチェーンパートナーと連携しながら、目標達成に取り組む時代であると考えます。